下の世代に伝えたいこととは

 :今の20代、30代のバンドに対してですが、自分たちがやってきた事と比較してどう変化があっ

   たのか、もしくはこんなことやればいいよとか、逆に自分たちが聞きたいこととかありますか?

増子:自分らが若い頃に上から言われたら腹立ったから、若いバンドに上からものは言いたくないん

   だよね (笑)。やっぱり俺たちの時代と違うし尺度も違う。これはもう全然似て非なるものだと

   俺は思ってるから。今の20代は、音楽を作って音楽を奏でようと思ってバンドを組むんだよ

   ね。俺ら違うからね。何か叫び散らかしたい、暴れたいっていうのが先で。楽器も出来ないう

   ちからさ。で、そいつん家が金持ちだったら「金あんのか、お前ドラム買え」って言って。

   「じゃあお前はギター買えよ」ってことになって。

二位:そうそう (笑)

増子:だけど今の子らはちゃんと色々と音楽を聴いて、音楽をちゃんと奏でたい。バンドじゃなくて

   もいいし機材もちゃんと揃ってて。それがスタート時点でさ、どっちが良いとか悪いとかじゃ

   なくて、全然違うから似て非なるものだよね。

二位:ロックを教室で勉強できる時代だもん。

増子:こっちはもう本当に勢いっていうか情熱だけから始まってるから、本当にちょっと違うんだよ

   なあ。だからもうアドバイスしようがないよね。すごく上手だし、いい曲作るし。だけどなん

   て言うの…俺が欲しいものではない。中にはいるよ、バカだなっていうくらい素晴らしいなっ

   ていうやつもいっぱい。だけど殆どはそういう感じじゃないから。俺ら優れた音楽を作りたい

   と思ってバンドを始めてないもんな。

二位:そうね。

増子:何しろ大暴れしたり、人にむちゃくちゃなことを言ったりさ、それだけなんだけどね。

 :かっこいいって言われたい、モテたいとか。

増子:そう、それだけ。

二位:ある意味さ、バイオレンスな人たちも、こいつらと一緒にいて暴れるのが楽しいなってところ

   から始まるんだよね。そこでバンドが始まって「どうする、どうする?」って言って、まず楽

   器を集めてやる場所と日を決める。チケット売って最後にちゃんと演奏できないことに気が付

   くみたいなね (笑)

増子:そう。基本的にそこ。

二位:うちらはね。田んぼで野球やるみたいな感じだよ。

増子:そう、草野球だね。

二位:今はちゃんとグラウンドがあるんだよなぁ。

増子:少年野球からちゃんとやってるでしょ。ちゃんと野球チームに入ってる感じの。

二位:うん、だから別に9人揃わなくてもいいんだもん。

   新聞紙丸めてガムテで丸めてボールにする…。それで楽しかったっていう子供心。

増子:ただそれはどっちが良いとか悪いとかの問題じゃないから。

   時代性もあるし、音楽をしっかり出来たら出来たで越したことはないけどね。

二位:時間掛かりすぎちゃうからね。うちらがやって来たことは。

増子:ただ楽しさが、まぁ~半端ないし、俺らはやっぱり楽しさの方を優先してきたっていうのはあ

   るね。こうすればいいのにっていうのはあんまり考えない。今の若い子らは正解ばっかり探さ

   ないで、もっとこう滅茶苦茶にやってもいいんじゃないかなと思ってね。

 :答えを見つけてから動くのではなく、やっていきながら答えを出せばと?

増子:そうだね、答えを知ってるんだよな。ネットでもYoutubeでも検索すれば大体が分かるから。

   こういう音楽はこういう風になってて、こういう風に進化していくとか分かっちゃうからさ。

   俺らの頃は全然情報ないからさ、何をどうしていいか分からない。じゃあこれとこれを合わせ

   てどんな感じになるのかなっていうのを全然分からないでやっているからさ。いわゆる前例が

   一個もないからね。

二位:好きだと思ってるパンクでさえ大勘違いだったんだよ。俺らはね。

増子だいたい最初に日本語でやるか英語でやるかみたいなところの選択から始まるような時代だから。

二位:答えの道筋がなかったからね。

増子:だから面白かったのかもね。

二位:ちょっと先に俺が東京に先に出て来て、たまたまライブハウスにいるわけだけど、その後に色

   んな地方の一番の人達が「わー」って、こぞって東京にやってくるわけ、あちこちから。九州

   から来ました、大阪から来ました、北海道からみたいな。そりゃ大変ですよ。

増子:カオスだよね。いい時代だったと思うよ。戻りたいかっていったら戻りたくないけど (笑)

 

 

武道館を体感して

 :前例がないことをやり進めてきて、挫折だったり上手くいかないことだったり、嬉しいことも

   もちろんあるという経験を踏まえた中で、怒髪天が武道館でのライブを行いました。バンドマ

   ンにとって憧れの場所だと思うんですけど、実際ステージに立った時の心境はどうでしたか?

増子:あれはご褒美だったからね。自分たちの力で行ったとは思ってないし、皆に連れてきてもらっ

   たと思ってて…。 あんまり記憶ないんだよね (笑)

二位:ええー記憶がない!? そうなの? (笑)

増子:うん。ただ、すごい嬉しかったのと同時に、もう本当にこれで俺たち4人だけのものじゃなく

   なったんだなっていう、ちょっとこう一抹の寂しさと、あとバンドに対する本当の意味での覚

   悟だよね。これは俺たちだけのものじゃなくなったっていう、これは自分たちの意志だけじゃ

   もう辞められないぞっていう、その覚悟もやっぱり改めて感じたっていうかさ。

二位:なるほどね~。

増子:もちろん嬉しかったのは一番だけど、覚悟をしなきゃいけないなって。俺は辞めたくなったら

   いつでも辞めてやろうと思ってたからね。

二位:わかる気がする。

増子:こうなると、俺は恩返しするのは解散しないことだと思ったから。そのためには解散しないで

   続けていく努力ということもさ、これから何かあった時にはしなきゃいけないんだなって。

二位:そりゃね、人事異動が出来ない仕事だからね。

増子:幸いそういう風に思ったことは一回もないけどね。リハをやってて、なにやってんのよってい

   う瞬間は何回もあるけど、坂さんとか、出来てねえだろっていう。もうツアーだぞおい!って

   いうのもあるけどね (笑)。だからと言ってそれがそつなく全部出来たらいいかって言ったらそ

   うじゃないけど。

二位とにかく、何があっても坂さんとやりたいでしょ (笑)

増子:文句言いながらやってるっていう。まぁ、文句を言

   いたい、坂さんには (笑)

二位:文句言いたいがためにやってるみたいなこと? (笑)

増子:つまり失敗してくれた方が俺としてはいいんだ (笑)

二位:ちゃんと出来て100点取っちゃったら  (笑)

増子:それはつまらない。

   そういうことじゃないんだってね (笑)

二位なるほど。いやでも坂さんのドラム素晴らしいよ、こないだQueで一人で叩き語りしてたけど。

 

 :二位さんも武道館へ観に行ってると思うんですけど、長い付き合いの二位さんにとって、武道

   館での怒髪天を観てどう感じましたか?

二位:いや~、凄すぎてこれまた分かんないよね。

増子:非現実的すぎて。

二位:そうね、でもね随分広い屋根裏みたいな感覚はあったな (笑)

増子:やってること変わらないもんね。

二位:そうそう、だから屋根裏当時の曲を久しぶりに聴いたのが武道館だったから、余計に何とも言

   えない気分になって、なんか武道館の楽屋は畳なのかな~みたいな気がしたよね。

増子:すごいことになっちゃったなって思ったね。

二位:とにかく、それまでに観た武道館のライブとは違った。色々なバンドを観た武道館と違った。

増子:ちょいちょいやってるんだったらまた別だけど、もうないだろうし、もう俺としてはやりたく

   ない感じ。

二位:ええ~やろうよ。

増子:もういいよ。

二位:60でやろうよ (笑)

増子:もういいわ! もうしばらく普通のライブをやりたい (笑)

二位:わかるよ! その感覚っていうのも、うちら世代の特殊な感情かもしれないね。

増子:なんか凄まじく大きいところでどんどんやりたいみたいなことは思わないし。何しろ良い曲

   作って、良いライブやるっていうのが、やっぱりバンドの本懐であって、それ以外は基本的に

   全部おまけだから。大きい所でやろうが、小さい所でやろうが構わないんだけど、やりやすい

   ところで常にベストを尽くしていくっていうのが、一番バンドにとっていいと思うんだけど。

   武道館がやりやすい所かって言われたら、プレッシャーがでかすぎてやりづらいからね (笑)。

   だからそんなに大きい所でやりたいと思わないっていうことだね。

二位:なるほどね。

増子:しかし、また面白いことになってきたなっていうのは本当にあるよね。

二位:うん。

増子:この3、4年で状況がね。俺たちだけじゃなく、周りのバンドの状況も面白くなってきたなって

   いうのはあるね。

二位:そうだ!

増子:でも、全部スタートはライブハウスだから。

二位:意識があるかどうか分からないけど、怒髪天が牽引というか、楽しいっていう運動場を作った

   んじゃない。

増子:そうだね。その点については自分たちのバンド単位で考えてないもんね。一個だけ抜きん出て

   何かやっても、終わりが来るのも早いと思うし。

二位:なるほど。

増子:やっぱり一緒にやって、周りもみんな楽しい方がいいから。

二位:うん。そういうのっていつ頃から意識しだした?

増子:昔からそうだよ。

二位:バンド組んだ時というか、遊んでる頃からだよね。

増子:うん、ずっとそう。

二位:そういう意識ってね。

増子:俺なんてあれだよ、有名になりたいとかそういう風に思ったことないからね。

二位:札幌時代すでに有名だから (笑)

増子:違う違う (笑)

二位:自衛隊の先輩まで青いモヒカンの事を知ってたんでしょ (笑)

増子:まあ、そうだけど (笑)。だけど、目立ちたいとか有名になりたいとか思ってやったわけじゃな

   いからね。ただめちゃくちゃやりたいと思っただけだからね。俺だけがどうにかっていうのは

   無いんだよね。だからこうして自分でバンドやってても、ソロで何かやりたいなって思ったこ

   とも一回もないもんね。

二位:そこ凄いなあ~。いい話だね。

増子:出来ないし (笑)

二位:なるほどね (笑)

増子:最少単位で考えればやっぱりバンドで動きたいし、バンドで考えたら対バンだったり仲間だっ

   たりとか、札幌時代からそうだったからね。一緒に来て一緒に遊んで、ライブも一緒にやっ

   てっていうのが多かったから。

二位:そうだよね、結局このメンバーでやったら面白いな、この対バンでやったら面白いな、このハ

   コでやったら面白いなっていうことの積み重ねだもんね。

増子:そう。だから、よく言われるのが、東京で知り合ったりした人が先に売れたりして、「何か

   焦った事とかありましたか?」って聞かれるんだけど、ないもんね。良かったなって思うだけ

   で、あれだけ売れてくれたら、金に困った時に少しぐらい貸してくれるかなっていう安心と

   か、それぐらいしかない (笑)

二位:なんか滅茶苦茶やりたいっていうとちょっと勘違いする人がいるかもしれないけど、俺から見

   てたら怒髪天は常に全力、面白いことを120%でやるから、20%の余力で他の人も面白くなる

   みたいな、そういう熱の使い方があって自然に面白くなるんだと思う。

増子:みんな楽しい方がいいもんね、絶対。

 :そうですね。その力がいろいろな人を巻き込んでいくと。

 

Copyright © CLUB Que SHIMOKITAZAWA All rights reserved