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Live Report ライブレポート 2000

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2000.12.16
"RESORT SOUNDS 2000 FINAL"
高橋徹也




自社レーベルEL TOSCO RECORDSの発足し、自らが求めるより良い音楽活動の場所を探し、確かに歩を進めたような印象を受けた高橋徹也の今年を締めくくるワンマンライブ。ほぼ満員に近い人で埋められた会場には、期待感と緊張感が混じり合った独特の空気が漂い、ステージにメンバーが登場すると、その空気がより濃くなった。「チャック全開!……それくらい恥ずかしい気持ちです。」始まった途端に引き込まれ浸っていた、彼の生んだ音楽世界からふいに我に返されたその突飛な今日一言目のMCに、思わず苦笑してしまったが、次の曲が始まれば、そんなMCはまるでなかったことのように、一瞬にして、またその世界に沈み込む自分がいる。そして、日常から連れてきた瑣末な胸のわだかまりが、1曲ごとにゆっくりと溶け出していき、代わりに歌声や音達が心を満たしていく。ワンマンなら自然と求めたくなるのが、新曲。「夢の中へ、霧の中へ」は、楽曲の類い稀なる質の高さは、期待を裏切らない素敵な曲だった。特別ゲストのサカタ氏を迎えた中盤、コサノ氏のつま弾くアコースティックギターの鳥肌の立つ音色と、サカタ氏を含めたメンバー4人のパーカッション、高橋氏のボーカルという特別な編成で演奏された「悪魔と踊れ」には、誰もが息を飲み、ステージに釘付けにされる。続く「人の噂」で、高橋氏がハンドマイクで歌い出すと、よりいっそう歌声の存在感が圧倒的になり、その素晴らしさに、ここにいる自分の幸せをひしと感じた。澄んだように冷ややかだったり、ひりひりするほど熱を帯びていたり、闇のような暗さを含んだり、光のような明るさを発したりする巧みな表現力と、稀有な美しさを持つ良質な声で、魂をも震わす高橋氏のボーカル。心音のような暖かさと重さで胸を直に叩く鹿島氏のベース。軽やかでいて確かな強さを持つチャコさんのドラム。想像だにしない音色とつややかな響きのセキグチ氏のギター。色彩に富んだ音や幻想的な旋律を奏でるコサノ氏のキーボード。その贅沢な音達の響宴に、目眩しそうな感激と興奮を終始感じ続けながら、その世界にたっぷり浸ったライブは、アンコールの名曲「犬と老人」で、切なく優しい余韻を残し、幕を閉じた。
(撮影/鈴木恵、文/松田聖子)
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