2002.7.12
「Abyssal」。深海の、光の届かない場所のこと。そこに鳴っているのは、きっとこんな音なんじゃないかなと思った。海の底へゆっくりと潜水を始めるような「Spiral world」からスタートしたthe primroseのワンマンライブ。照明を落とし、暗くなったステージに浮かび上がるメンバーの姿に目を向けながら浮遊感あるサウンドの波に漂う観客は、彼らの海に放たれてとても自由な魚になる。ゆらゆらと身体を揺らすオーディエンスの影は深海から見上げた海面のゆらぎ。エモーショナルな「Sleep like a lion」からその揺れる海は波を高くする。松井の声が波動となって海を大きく動かしている。newアルバム「Abyssal」の曲中心とは言え、はやくも新曲を用意してファンの海に新しい風を与える彼ら。そんなthe primroseの音で形成される海は、胎児の記憶を呼び覚ますのか。ひとは母親の胎内にいるとき、母の海にいる、と聞く。彼らの音楽はそんな“母の海”のような温もりで聴く者を穏やかな時間へ誘う。アルバムにも収められ、ファンにも馴染みの深い「Dope to dope」のイントロが届くと会場の熱が上昇する。いよいよライブが終盤に近付いたのだ。観客の海は激しくうねりを起こして全身で彼らの音の粒子を浴び、「einsten」、そしてアンコールの2曲を加え、2時間半に渡るライヴは幕を閉じた。ここは深海。the primroseという光しか届かない海底遊泳、心から楽しませてもらった。"RETURN TO NATURAL 2002 夏の陣" "「abyssal」発売記念ワンマンライヴ" the primrose DJ>SINSEN (撮影/鈴木恵、文/えびさわなち) ※CLUB Que WEBSITEすべてのコンテンツに使用されている画像の無断転載は禁止です。
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