「怒髪天」増子直純、スペシャルインタビュー
 主催イベントや、カウントダウン、66NITE、またCLUB Que 9周年製作映画Colors of Lifeへの出演/音楽など、CLUB Queの歴史に数々の爪跡(傷跡)を残しQueとは切っても切り離せない「怒髪天」。今回は怒髪天のNEW ALBUM「LIFE BOWL」の発売と「ディスカバリージャパン 原点カイキ大作戦」のCLUB Que開催を記念して、増子直純氏をお招きし、スペシャルインタビューを行いました。  北海道で結成された怒髪天が一度活動を休止し、そして新たに活動を再開したのが1999年3月。くしくも僕(西島)が熊本から上京したのも1999年3月なのです! この偶然の一致を逃す手は無く、東京で汚れた自分を見直しながら、色々と伺いました。  「音楽、バンド、メンバー、レーベル、ファッション、ブログ、映画、スポーツ、DJ、乗り物」など、余す事なく率直に語られるその言葉の中にある笑いと真実。 そして最後に増子氏が語る「男」とは!?これを読めばあなたの人生もおっきな器になるですよ!!
[インタビュー:西島しょうじ、通行人:二位徳裕、あいづち:千葉真由美 場所:風知空知]
豪華ゲストを迎えた1年ぶりとなるオリジナルアルバム「LIFE BOWL」の制作の裏側や、毎回違ったアプローチが見られるアー写やジャケットデザイン、そして新レーベルについて語って頂きました。

■新アルバム「LIFE BOWL」について
しょうじ(以下しょ)>では、はじめにニューアルバムについてお伺いします。アルバムタイトルが「LIFE BOWL」、和訳すると人生丼ですか?
増子(以下増)>そう「LIFE BOWL」人生丼ぶりだね。日本語でニューアルバム「人生丼ぶり」ってのは売れねーわ、これ(笑)。で、まー英語にしとくかみたいな。 人生とか生活丼ぶりとか、器の中に色々な人生が入ってて、ゲストも入れて仲間なんかが色々トッピングされてるって事をね。いいタイトルだと思う。
二位(以下二)>いいね~!いいタイトルだね。
増>ライスボールだとおにぎりになっちゃって、それ坂さんのソロだから(笑)。
しょ>レコーディングには色んな方をゲストに招いたんですよね?
増>ギターウルフ・セイジさん。凄いよ、ギターゲストで来てもらったんだから。ギターとシャウト。一回作った曲を勝手に滅茶苦茶に弾いてもらって曲ぶっ壊してもらって、きっちりと作ったものを一回壊すって事をやったの。ハウリングの嵐だから。あと4つ打ちの曲があって80's的なキーボードを入れたいと思って、今までは友康(※1)が弾いてたりしてたけど、ケイタイモ(BEAT CRUSADERS)を呼んだの。
しょ>今までに比べてニュアンスの変化はありましたか?。
増>全然違うね、友達を家に招いたみたいで面白かった。あと1曲、ぐっとくるメロウな曲にキーボード入れようかってなって、仲のいい人だけ呼ぼうって事でミト君(クラムボン)を入れたの。環境系のサウンドでしょ。絶対に自分達では想像つかない、不協和音系の音をやってもらったらすごい良かった。金払って呼ぶのは簡単だけど自分達のニュアンスを分かってくれる人達にやってもらいたかったし、なるべく離れているジャンルでその道のスペシャリストが良かったからね。
二>ギターウルフBEAT CRUSADERSクラムボンが同じアルバムに参加するのはすごいよね。
増>無いよ、まず無い。怒髪天らしさって事を2,3年考えたの。結局、怒髪天らしさなんていつ感じるかというと、人に言われてる事とか見た目であって自分の基準じゃないじゃん。結局自分がやりたい事をやってれば自分らしくて良いわけだから。これやったら自分等らしく無いと思った事も一回ぶっ壊そうと思って。4人だけでアルバム作ろうという概念も意外とつまんないしね。
しょ>ゲストミュージシャンを入れたのも今回が初めてなんですか?
増>ゲスト入れたのもほとんど初めて、ここ10年では初めて。今まではゲスト入れてうまく交わらせて消化出来るかとか、考えた事もなかったからさ。ライブで再現出来ない事はアルバムでやりたくないという考えも、もういいかなと。アルバムでしか出来ない事もあるし、ライブで出来る事はライブでやればいいし、それやったほうが楽しいじゃん。今回一番凄かったのがさ、初めてレコーディングしながらライブもやって、同時進行してみたの。今までレコーディング時は、曲作りから2、3ヶ月間ライブやらずにこもって曲作りしてきたから。でも他のバンド見てると、the pillowsなんかでも同時進行が多いし、BEAT CRUSADERSでも一緒にライブやってる時「今からレコーディングなんです」なんて帰ったりするでしょ。なんかカッコいいな~と思って、忙しいぽくって(笑)。
二>何か大きく違った?
増>新しいもの見えるんじゃないかと思ってやったらねー、地獄見たわ。本当の意味で地獄見えた、すっげー大変だった。
二>体力的に?頭の切り替え?
増>両方。だって曲まとめる時間ねーんだもん、歌詞をさ。カケラは常にいっぱいあんだけどさ、それを絞っていく作業じゃない。刀に例えたら叩いて形に整えていく作業、それをやる時間が極端に少なかった。だけどそのおかげですごい面白い事も出来たし、率直な物が出来た。俺、レコーディングするその瞬間まで歌詞を書き直してるから、曲もそうだけど。それをスカッと切り取れた。
二>タイトルに詩を付ける?それとも詩にタイトルを付けてる?
増>ケースバイケースだね。
しょ>ライブをイメージして曲を作るんですか?
増>最初に今回は10曲入りを作ろうと言うと、友康は30曲ぐらい作ってくんの。恐ろしい事にもうやめてくれって言うくらい作って来て、その中から選んでく。今回はライブを意識して、全曲ライブでやれる感じになってる。今まではライブで一回しか出来ない曲とかあったから。
しょ>歌詞を曲に合わせる作業はどのように進めますか?
増>いろんなパターンがあるけど、曲聴いて歌詞が生まれたりとか、あっこれあの曲だって前に書いてたヤツを持って来たりとか。逆に友康にこういうのやりたいから、作ってくれと言ってやる事もあるね、大概イメージにピッタリだよ。逆にイメージからずらして、切ない歌詞を楽しいのにのっけたりとか。割りとそっちの方が俺達のやり方に多いレギュラーなんだけど、切ない歌詞に切ない曲をのせるというベタな事もたまにやったりする。
しょ>これからのライブに、レコーディングで参加されたゲストの方達が来る事はありますか?
増>楽しいだろうねー呼んだら。レコーディング、サイコーだったから。予想以上!すぐ神降りてくるからね。最後のアンプのスイッチ切る音まで入ってるから。
二>向こうも刺激的だっただろうね。
増>「これでいいの?」って聞いてたもん、良いも悪いも無いもん。想像通りだった。

※1:怒髪天のギタリストで、バンドの心臓といっても良いでしょう。彼の音楽センスで怒髪天をより只ならぬバンドに押し上げている感あり。常にギター弾いています。
↑戻る


■怒髪天の、アー写・ジャケ写などのデザインについて。
しょ>今度のアルバムのジャケットデザインはどのような感じですか?
増>ジャケットは今やってる。凄いデザインになると思うよ、まだ分かんないけど。デザインもみんなで考えてて、デザイナーに頼む場合も最初にアイデアを出してやってるから。その時作ってる物の感じのみでやりたい。
しょ>酒燃料爆進曲の缶ビールを持ったアー写(※写真1)のアイデアは?
増>あれはDEVO(アメリカの代表的なニューウェーブバンド)のパクリでやってみようと。さわやかな感じで、そしてちょっと馬鹿っぽいっていうヤツを。
しょ>トーキョー・ロンリー・サムライマンのドット文字のデザインも、それまでのイメージとは大きく違っていましたが。
増>あれは俺はずっとやりたかったの、ゲーム好きだからね。あんまり英語寄りの物にドット付けるとあざといかなと思って、もっとベタな和風ぽい物に合わせたくてやってみた。本当はデザイナーが1人とかの方がやり易いのかも知れないけど、いろんな事やってみたいからね。デザイン能力自体は俺らに無いから、色んな人に預けたりカケラ渡して、こんな感じだよーってやると返ってくるのが楽しみ。どんな風になるかなぁとか。スタイリストと一緒でさ、「この服似合いますよー」ってやったりするじゃん、俺は別にスタイリスト付いてないけどそれに近いものあるよね。
しょ>衣装は自前ですか?
増>いや、揃えてもらったりもするよ。どういう風にするって最初のコンセプトがあって、それに合わせた感じで毎回やってる。
しょ>いろんなパターンで毎回表情が違いますが、アー写などでイメージを付けたいという事はあまりないですか?
増>もう長年やってるからね。これが出たてのバンドだったら同じイメージで押して行った方がいいかも知れないけど、もう分かる奴は分かってるしさ。新しく初めて見た奴が、なんだこれ!?って思うヤツであればいいんじゃない。
二>でも、統一感はあるんだよね。
増>まぁ、やってる人間が人間だからね。
二>人間性に強い統一感があって芯がぶれないから、すごい幅の広い事がやれる。最初に会った時(91年?)は仙人みたいな格好で、数珠ぶら下げてすごかったから。
増>ちょっと先行き過ぎた(笑)。サンダルどころじゃない、雪駄だもん。あの頃、雪駄履いてる奴なんかいなかったから、ジャージに雪駄だからね。
二>マリア観音(※2)、怒髪天といったら逆ビジュアルの真骨頂みたいな。
増>マリア観音に「イイ」って言われたの俺達だけだからね、当時ね(笑)。「他のバンドは全部ダメだって」言ってきた(笑)
二>後にも先にもあんなバンドいないよね。
増>いないでしょ、誰もやらんでしょ。
しょ>それやってる頃っていつ位ですか?
増>20代前半だね。東京に出て来た時はそのカッコだよ、出てくる前からそのカッコで絶対流行ると思ってた(笑)、カッコいいと思ってたから。高校時代はパンクスタイルで、だんだんおかしくなっていった(笑)。ヤンキーとパンクスタイルの中間だからね、絶対ソリこみだから。長髪だって、俺これくらい(腰)まであったもん。それにソリ込みもこれぐらい(頭半分)あったし眉毛もほとんどなかったし、意味分かんない(笑)。今のグレイス(※3)(The COMMMONS)に近いね、あの流れで唯一残ってるのがグレイスで、ああいう奴がいっぱいいたんだから。今あのパーマかけてるのグレだけだから(笑)。
しょ>それはステージ衣装じゃなくて、普段からですか?
増>普段からジャージだったよ、絶対流行ると思って。ジャージはちょっと流行ったよね、そういうの早かったからね。ボブ・マーリー聴いて、絶対ジャージだと思った。ジャージにネクタイの時期もあったし、もう滅茶苦茶だよ。これカッコいいなと思った物は何も考えずにすぐやるタイプだからね。
二>いつも何か探してたんだろうな。
増>暇だったからね。坂さん(※4)、リーゼントでふんどしだよ。ふんどし一丁でライブやってたんだから(笑)。活動休止のもっと前でTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTとかTheピーズと屋根裏(※5)でやってた時はずっとそうだよ。あの頃住んでたアパートがナオキ(LAUGHIN'NOSE)さんと一緒だったの。そこに菊池(菊池茂夫/カメラマン・全身タトゥー)さんが遊びに来てナオキさんに紹介したとき「ヤベーの来たな、おい」と思ったって言ってた(笑)。

※2:下北沢屋根裏によく出演していた形容しようがない凄いバンド。ハードでプログレッシブで和でヒッピーで超テクで見た目にドスがきいている。ギタリストはその後、増子の実弟がVOをつとめるDMBQへ加入している。
↑戻る

※3:20年以上前から下北に生息しているデッカイ男。リーゼントに鬼ゾリの剃り込みはリアル80年代。彼もまた1966年生まれ。
↑戻る

※4:言わずと知れた怒髪天のドラマーで、日本一のドラマーだが、沢山食べないと本領を発揮してくれない。技術は素晴らしいものがあるが、それを酔っ払いのイメージで隠している(?)
↑戻る

※5:CLUB Queの隣にあるライヴハウス。ライヴハウスの中のライヴハウス! 下北沢でフルタイムで稼動しているハコとしてはもっとも古いです。実はCLUB Queの店長二位徳裕はCLUB Queがオープンする以前の1990~94の間にここでブッキングをしていたんですが、そのころに怒髪天が上京。ここを根城として活動していました。他にTheピーズやTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT、YO-KINGなど今をときめくバンドが沢山出ていた上に、Hi-STANDARDの横山君なんかがアルバイトしてたりしていて、何かとてつもないエネルギーを抱えた時代と場所だったようです。
↑戻る


■BAD MUSICはどうですか、また新レーベルNorthern Blossom Recordについて。
増>今度、レーベルも始めたから。
しょ>Northern Blossom Recordsですね。
増>そうそう、それで今BUGY CRAXONE(※6)のレコーディングしてる。
二>彼らを選んだのは?
増>カッコいいから、聴いてきた物も一緒だし。あれね男が歌ったら本当、基本THE MODSだからね。あとFugaziとかを併せたような、スッゲーカッコいいサウンド。
二>ああいうスタイルの女の子ボーカルも今いないからね。
増>やっぱりもっと知られるべきだと思ったしカッコいいよ、柔軟性あるしね。POPな曲でもメロウな曲を歌ってもいけるし、これからだから。今、年重ねてカッコ良くなる女性ボーカルってあんまりいないじゃん、ようこ(※7)(うつみようこ&YOKOLOCO BAND)さんぐらいじゃい?
しょ>プロデュースもされてるんですか?
増>参考までにね。
しょ>そもそも新レーベルをやろうと思ったきっかけは何ですか?
増>山中(※8)(the pillows)もやってるでしょ、それで凄い勉強になったって言ってたらしくて。門池さん(※9)が「あれも凄い勉強になったって言ってたぞ、やってみれば」ってBAD(※10)入る時に言ってて、じゃあやってみたいバンドが出来たらやってみようかなぁと思って。今一番必要としていてどこもサポートしてないバンドを、もったいないようなバンドをね。
しょ>バンドを選ぶにあたって北海道出身じゃなきゃダメだとか、何かこだわりはありますか?
増>特に限定はしてないんだけど、北海道含めて地方から上京してきたバンドっていっぱいあるじゃん。いい曲作っていいライブやりたいという事だけを考えれば長くやる事は出来るけど、やっぱ大変だから。自分達も経験してきて、今後どうしようかと思う時がみんな絶対来るから、そういう時に受け皿になれるものを作っとこうと。それをやりたいと思ってる。
しょ>新しい事でいえば、女性自身のブログで「男子たるもの」をやってますね。あれ読んでますけど本当に面白い。どんな経緯で始まったんですか?
増>編集の人が「男の墓場プロ」の人だったの、それで怒髪天好きで、まさか「女性自身ブログ」にね。あそこで「男子たるもの」って意味が分からない(笑)、誰読んでんだよって。でもアクセス数凄いらしいよ。
二>それが女性自身ってのが凄いね。

※6:北海道出身の4ピースバンド。女性ヴォーカルだが一般的なイメージより破格に男くさい。いやほとんどのバンドより男くさい。ストレートで飾り気のない音楽はロックへの忘れている魂を呼び起こしてくれる物。
↑戻る

※7:うつみようこ。メスカリンドライヴという伝説のバンドを率いた事もある帰国子女。英語は誰よりも堪能だが日本語は関西弁。すぐ怒るイメージは間違いないが、時々優しくてホロリとくる素敵な女性である一面も持つ。声が大きい、歌が上手い、英語が喋れる。ヴォーカリストとして完璧な良い条件をお持ちであるが、姉御肌なために開花するのは年取ってからに違いないといわれている。
↑戻る

※8:説明いらないと思うけどthe pillowsのボーカリスト。怒髪天と同じ札幌出身でちょっと年下にあたるため、彼は増子直純の伝説を誰よりも知っている…(事実じゃない伝説も含めて)。映画「Colors of Life」では意を決して増子の敵役にまわっていただきました。彼もまた骨っぽい性格なのですが、札幌だからなのでしょうか、時代なのでしょうかそれはわかりませんが、彼らが学生の頃の札幌には何かが起きてたに違いないですね。でなければこんなに凄いミュージシャンが沢山でるわけないですもん。
↑戻る

※9:BAD MUSIC社長兼打ち上げ隊長。世界一アグレッシブで愉快な社長。パンツ脱いで坂さんのひざの上に座れる社長。ワイン大好きエッチな社長。社長オブ社長。元々はドラマーで、渋谷Lamamaの創設者というのはあまり知られていない。
↑戻る

※10:音楽事務所 BAD MUSIC GROUP。古くはMr.Children、JUN SKY WALKER(S)、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、そしてthe pillowsを抱える業界の異端事務所。いやいやオアシス。そして必然的に怒髪天が加入。CLUB QueはUKP以上にとってもお世話になってます。
↑戻る


R&E(リズム&演歌)という新しいジャンルを確立し、今や「怒髪天」がジャンルと言えるまでの唯一無二な存在ですが、そんな怒髪天にも活動休止や復活など紆余曲折がありました。増子さんがバンドマンになる瞬間の話から、怒髪天の現在までの流れやメンバーについて語って頂きました。

■増子さんの初ステージについて
増>高校生の時だね。バンドやって、何か高校の軽音楽部かなんか。学校ほとんど行ってないけど。それでライブやるっかってなって、高校の奴と外の友達と。
二>それが怒髪天?
増>違う、高二くらいだから。怒髪天は高三から。最初やるとき俺はベースやりたいと思ってバンド始めたから、下手過ぎてすぐクビだけど。
しょ>ステージで楽器弾いたことは無いんですか?
増>持った事はあるよ、弾いた事は無いけど(笑)。最初パンク(※11)聴いてて、THE MODS(※12)とかTHE STALIN(※13)とかアナーキー(※14)とかをやろうとコピーしてたりしてたの、で、ひっどいオリジナル作ってみたりして。ボーカルが中学校の同級生だったんだけど、そいつがライブやる前に、従兄の兄ちゃんのバンドに引き抜かれたの。で、しょうがねぇな~っとなって「じゃ歌ってよ」って言われて、「分かった、じゃあ一回だけやるわ」って。ボーカルなんてやる気いっこも無かったからね、未だに無いよ。人前で唄歌いたいと思った事なんて無いから、今でも。
二>あーそう。そこからなんだ。
増>まぁ、楽しいからね。なんかボーカルの人って、目立ちたいとか俺が俺がとか俺大好きみたいなね。俺そんなの全然無いからね。むしろ俺の理想はベースのシミだよ。あんなベーシストになりたかったの。あんまり弾かなくていいし、ニヤニヤして適当に好き勝手やってられるじゃん。俺の中でのベースのイメージはあれなのよ。
二>だけど坂さんにしてもシミにしてもうまいじゃん。若い子がみて、こういうラインを弾いてるんだって探りたいミュージシャンだと思うよ。
増>やってる事は難しいよ。こないだハル(※15)さんとこ(Theピーズ)とやった時に一曲ずつカバーしあったの。そしたらハルさんからメールきて、こんなの歌いながら弾けないって、ギターも難しすぎて無理だって。音数多すぎるって。どうせ酔っ払いながら作ってんだろうから、簡単だろうとナメてたって(笑)。
しょ>増子さんはボーカリスト中のボーカリスト。ザ・ボーカリストという感じですが。
増>どっちかっていうと司会者向きだなとは思うけど(笑)。自分で司会して歌ってるような物だからね、じゃ次はこの曲です!みたいな。俺、だから本当に思うよ、自分大好きとかいう事をパワーにしている人は凄いと思う。そんなに自分を好きだと思ったこと無いよ、取り立てて嫌いだとも思わないけど。だって最初に配られたカードだからね。なるべく、みっともなく見えないようにしようとは思ってるけど。別に俺がこれやりたいからこうするみたいなのは別にない、昔っから何もない。気に入らなかったらやらないだけだし。
二>とにかく面白い事大好き。
増>面白いこと最優先!面白い事の為だったら死んでもいい(笑)。ホントにこれは大前提だから。

※11:70年代中ごろからニューヨークのあたりでザワザワなり始めて、76年のロンドンで大爆発したロックの総称。ファッションや精神面を含めた音楽のあり方なんだろうけど、極端なところばかりが真似されて、一般には真意が伝わっていない感じ。そういう意味では怒髪天をパンクという人は少ないと思うけど、気持ちとスタイルと音楽の3本柱をバランスしている彼らこそパンクだと言うことが出来ると思うのです。
↑戻る

※12:怒髪天世代のロック好きは誰もが憧れ聴きまくった博多出身のバンド。大雨の日比谷屋音でのライブは伝説となっています。キャロル以降のロックの流れを完全に変えたエポックメイキングな存在。1976年にMOZZからMODSに改名。デビュー以来不動のメンバーだったのだけど最近ドラマーが脱退。
↑戻る

※13:1980年結成の日本を代表するパンクバンド。なんだけどロンドンのそれよりも、さらに奇行ばかりが取りざたされたバンドかも。だけど何処にも属さないロックは後にも先にもスターリンだけという気もします。パンクをも超えています。ヴォーカルの遠藤ミチロウさんはクハラカズユキとM.J.Qをやってたりしてます。
↑戻る

※14:スターリンと二分した日本パンクの雄。国鉄服にデカすぎるモヒカンはもう強烈で、北斗の拳が世に出たときにアナーキーとイメージをダブらせた人は多いはず。その後それぞれのメンバーは凄すぎるテクニックを持ったミュージシャンという立ち位置にいるのも面白いし、元々ロックって不良のもので、不良な人ほど特殊な才能があるんだなと思わずにはいられないバンドです。
↑戻る

※15:大木ハルユキ。The ピーズのヴォーカル&ベース。80年代の力の入りすぎたロックを一転させた4畳半的なロックンロールが斬新すぎて、世間の度肝をぬいた。CLUB Que店長が東京に出て来て一番最初に知り合った人です。キャロル(矢沢永吉)を語らせたら朝でも夜でもどこでもOK 。
↑戻る


■活動休止中の状況は
増>仕事が面白かった。だってスゲーお金が入ってくるんだもん。
しょ>その間、どんな仕事をしてたんですか?
増>実演販売とか、雑貨屋の店長とかやってたけど、あれはやっぱ凄いよ。本当に思ったけど実際働いてたら給料出んじゃん、毎月だよ。ちょっと3、4日休んでも収入が一定なんだよ。だから再来月は旅行に行こうとか、あのオモチャ買おうかなとか、来月、再来月の予定が立てられる。そういうの一回もやったこと無い生活だったから。高校出てすぐ自衛隊(※16)だったけど、給料は全部強制貯金だしさ。やめた後に革ジャン買って日帰りで東京に遊びに行ったりして全部無くなったんだけど(笑)、そういう生活だったんだからさ。東京来てバンドやってからも、ロクに働いてなかったから。で、日給月給じゃんこういう現場仕事って。うちの実家の会社も手伝ってたんだけど、土建屋で日給月給だから、それしか知らんかったから本当にスゲーと思ったよ。
二>そういう生活とか仕事の事とかが歌詞に反映された事は?
増>いっぱいあるよ。バンドやってる奴が最高な世界に住んできたけど、でもすごい小ちゃい村の事件だったと気付いたね。働いててもバンドやってても面白いヤツはいっぱいいるし、もう狂ってるもヤツいっぱいいるし、働いてたらよけいいるわ。そういうの勉強になったし面白かった。バンドは子供の遊びだなって思ったもん、バンドなんて。世間には全然スゲーやついっぱいいるなと思ったもん。

※16:日本を世界の悪い国から守るために作られたとする団体。大雑把に空と海と陸に分かれていて、増子直純は高校卒業後この団体の空のチームに就職した(無意識にさせられていたらしい)。といっても飛行機を飛ばした訳ではなく、千歳のミサイル部隊に2年間いた。
↑戻る


■活動再開の経緯と、その後の流れ
増>シミに呼ばれて、「話しあるからちょっと呑みに行こうよ」なんて。いよいよ田舎帰るかと思ったけど(笑)。したら「もう一回やろう」と。
しょ>休止中に会ったりもしてたんですか?
増>たまーにね。実は俺、休んでる間一回もライブハウス行ってないし。
二>俺ともその間、ほんと会わなかったもんね。
増>働いて色んなとこに行ってみたかったの、日本全国。実演販売やって九州から北海道まで色んなところ旅して面白かったよ。それでまぁやろうよと、で、やる気なかったから「やだ」って言ったら、友康呼んで「もう一回やろう」なんて言うから、「じゃ分かった、まあいいよ、そのかわりライブは多くても2ヶ月に1回、練習は週1、多くてね。仕事は辞めないよって、仕事優先にするから」って、そう言って始めたの。
二>その一回目が99年のVIVA YOUNG(※17)だね。
増>最初やった時、誰も演奏合わなくてやばかったよ、こんなにダメになんのかと。シミ、ガックリきてたからね。特に坂さん全然叩けなかったもん。ライブやるまで半年以上ずーっとリハだけだったの、リハビリしてた。その後新曲作るかという事になってサムライブルー作ったら、これいっぱいの人に聞いて欲しいって勝手にまた思ってさ。で、仕事辞めてまたちゃんとバンドやろうと思ったの。楽しかったよ、やっぱ。色んな事やってきたけど、なにより四人でやるの楽しいからなぁ。
二>流れとしては良かったんだよね。休止も含めてね。
増>またやるとは思ってなかった、バンドで食っていこうなんて思った事なかったから。それで食っていこうとするとさ、色々とやらなきゃいけない事がバンドに負荷かかるんじゃないかと思ってさ。
しょ>で、2000年にはすぐON AIR WESTやってますよね。
増>そう、そこら辺で"極東最前線(※18)"てeastern youthのイベント出てから、みんなガバーっと観に来てくれるようになったもん。
しょ>じゃ、活動始めたらいろんな状況がすぐに周りはじめたんですね。
増>やってから色んな話来て、面白そうなのだけやって、みたいな。
二>もしかしたらVIVA YOUNGの前にやってるわ。(昔のスケジュールを引っ張り出して)VIVA YOUNGが99年7月で6月に入ってる、6月24日にハックルベリーフィン(※19)/VESSEとやってる。
増>じゃそれが最初か、意外な事実判明。そんな感じで始めたけど、新曲出来るとダメだわ、バンドモードになっちゃう。これは絶対行ける!聞かせた方がいいよみたいな、余計なお世話つうかそんな心が絶対バンドマンには出てくるから。これちょっと今回のやべんじゃねぇのと、もう10何年もアルバム出るたびに言ってる。何枚出して何回言ってんだよ(笑)。しかも毎回真剣に言ってるからね、ついに来るんじゃねぇみたいな。
二>そして企画やろうと言ってディスカバリージャパンやり始めたんだよね。
増>そうそう、だから今回のディスカバリー(10/31,11/1)は嬉しいよ。本来俺がやりたかったディスカバリーってQueなんだもん。でっかい箱でやるのはあくまでスペシャルだからね。
二>再結成後は、想像以上に周りが受け止めてくれたって感じだよね。
増>そんなに忙しくなるとは思わなかったもん。いつも年末とかカウントダウンとかやってるけど、年またぎのカウントダウン(※20)やったのは多分Queだけなんだよな。色々な話が来るけどQueでしかやってない。前から言ってたからね、屋根裏に出てた時代から絶対にこれが受け入れられないわけ無いよと、なぜ受け入れられないか誰にも分からなかったもん。
二>すごい覚えてることがあって、「年取ると若い女の子の兄貴みたいな存在になって若い子達がくいついて来る」って言ったの、活動再開した時くらいに。そしたら「そんな訳ねぇーよ」って。
増>今だにそんな訳ないと思ってるもん。今ね凄いお客さん若いからね、だから分からない。
しょ>若いバンドにはどう思いますか?
増>だから若者のバンドに、なんかこう異常なパワーが足りないというか、かたち整いすぎてると思うわ。こないだ大阪でゼロ世代といわれるバンドとやったけど、あれだもん元々は、俺らがやってたのはあれだもん。あのぐらい滅茶苦茶じゃないと後からかたち整えたとき何も残らない。最初からどんな風にやったらカッコいいだろうと考えて、表したいとかぶつけたいと思う事以上に、そっちに寄せちゃってるのは良くないと思う。何かこう、やさしさロックみたいなものばっかりじゃん、今。片寄った物の方がいいよ。

※17:怒髪天が昔から交流のあったバンド、マーブルダイヤモンドの倉山直樹が主催のイヴェント。現在バンドは24/7というスカテイストのバンドに変わっているが、ビバヤングは継続中。ナンバーガールやTHE NEATBEATSもこのイヴェントで初めてCLUB Queのステージを踏んでいる。
↑戻る

※18:怒髪天の僚友ともいえる北海道出身のeastern youthが企てたイヴェント。高円寺20000Vで始まり、出演者のオムニバスCDを作り、いわゆるデカ箱を使う事もありで、バンドイヴェントの理想形を辿っていった。
↑戻る

※19:埼玉県草加市出身の3人組。ロックセンスの高いポップス性を売りとしている。高い音楽性を持ちながら、日常サイズの空気感でステージに立つ点などで、共感する部分があるかもしれないというQue店長の思い込みで怒髪天の再結成の対バンに抜擢。
↑戻る

※20:ライブハウスでは、毎年の大晦日に沢山のバンドに出てもらって、暮れから新年を楽しむというのが恒例になっていますが、その中でも年をまたいで演奏できるのは1バンドのみですね。怒髪天には2002年にそのカウウントダウンをやっていただきました。
↑戻る


■メンバーについて
二>ツアー行くのに坂さんがおにぎり作って、それ忘れたんだって。で、静岡のインターに寄って、しょうがないから「たらふく食いなよ」って言ったんだよね・・
増>もうすねちゃって食わねーんだもん、「食べたくない」つって。おにぎり取りに高速降りて戻れっつんだから、帰りたいって言うんだから!ふざけんなって話だよ。何言ってんのダメだよって、全部却下だよ当然。「今日は食べません」ってすねちゃって、バカだよ。で一週間後帰ってきたら、腐ってんならまだしもさ、水分抜けてこんなに小さくなってんの、おにぎり全部カピカピになっちゃって(笑)。どーなのよ。
しょ>ケンカする事は無いですか?
増>ないね、年も年だしさー。俺と友康は地方ライブ行ったら、ライブ続いてると打ち上げ出ずに早めに寝ちゃうんだけど、坂さんとシミ(※21)は必ず飲み行くからね。打ち上げなくても二人とかで飲み行ってっから、やっぱ仲いいんだね。

※21:怒髪天再結成の切っ掛けを作った功労者でベーシスト。メンバー唯一の年下。彼もまたミュージシャンでなければ生きていけないタイプの人間。笑顔が憎めないです。
↑戻る


近年、ものすごい勢いでライブハウスが増えました。と言うことは出演するバンドもそれだけ増えたという事ですが長いバンド歴で数々のバンドと交わり接してきた増子さんが思う、バンドマンの姿勢やその音楽思考とは。

■増子さんが見て、アプローチのしかたなどで嫉妬するバンドはいますか。
増>ないね、俺好きな音楽っていっぱいあるけど「夜スト」や「騒音寺」にしても、あれはやっぱあの人たちにしか出来ないものだから。音楽的なセンスとかはあるよ、俺は音楽的なセンスでいったらほとんど無いから。なにしろ1,2,3,4でジャーンとやればいいと思ってるから。だけどほら音楽的に良く知ってる、分かってるメンバーとやってるから成り立っているだけであって。
二>実はそれが凄いんだよね。
増>小島麻由美なんていいなぁーと思うけどね。あれは俺には何もかも出来ない事 だから。あと、昔のアニメソングとか好きだから、「あしたのジョー」とか「タイガーマスク」とか男らしい勇ましい曲ってあんじゃん「仮面ライダー」とか、ああいうロック魂のあるものをやれるのは俺らしかいないとは思ってる。あれを他にやられたら悔しいけど誰もやらない。ぜんぜんやる気配すらない(笑)。今回のアルバムに"男とかいて"って曲あるけどこれカッコいいから「あしたのジョー」とか、もしまた映画化とかするならこれを絶対使って欲しいよ、めちゃくちゃカッコいいよ。本気でバカだし。こういう曲を他にやられたら悔しいなーと思うね。ここ何年か見てきてるけど誰もやらない。

■バンドマン、ミュージシャン、アーティストという呼ばれ方の中で、自分達は何だと思いますか。
増>バンドマンだよ。アーティストなんておこがましいよ。いや本当、俺はね。アーティストと思ってる人は別にいいんじゃない、自称すれば何でもそうだから。 でもロックバンドなんてしょせんさ、チンピラの暇つぶしで始まったようなもんなんだから。何か頭にくるとか、合法的に世の中に嫌がらせしてやろうみたいな、そんなのがロックバンドなんだから、それ忘れたらね・・・・。
しょ>ロックスターは嫌ですか?
増>ロックスターはいた方がいいと思う。でもロックスターをおちょくるのが俺の仕事だから(笑)。俺ロックスター自体は好きなの、カッコいいと思うよ。それをパロディーにするのが俺の仕事だから。
しょ>ではミュージシャンは?
増>ミュージシャンはやっぱスタジオとか演奏人という人達だと思う。俺はどっちかというとパフォーマーというかやっぱりバンドマンだね。バンドありきだしバンド無かったらどうしようもないしな。外で何かやれるわけじゃないし。ま、結婚式の司会くらい出来るけど。
二>やっていただきました、それで素晴らしい演奏を聞かせて頂きました(笑)。
増>あれはねーここ10年くらいで一番ひどいよ、自分達的には何にも覚えてないけど。シミ飲みすぎて1回寝ちゃって起こされて来たもんだから目まっ赤っ赤だもん。
しょ>あの時はステージにたどり着けただけで良かったです(笑)。


ライブやTVや雑誌で垣間見られる増子さんの豊富な話題はどこから来るのでしょう? 少しでも探りたいという事で、普段の生活や嗜好などを語ってもらいました。

■増子さんの普段の足(乗り物)は、なんですか?
増>ダックス(DAX/HONDAのバイク。Colors of Lifeでも使用)あれだけだね。Queに売ろうかなーと思って。あれさバラしてQueの壁のオブジェにしない?すごい売ってくれって、いろんな奴に言われんだけど、やっぱあれはいつでも見れるとこにあったほうがいいと思うから。置いとくとこなくてさー。
しょ>じゃあ、今日も電車ですか?
増>電車電車。あとチャリだね。俺飲むじゃん、電車無くなるし車・バイクだめじゃん、チャリも本当はダメだけど、でも何とかなる。新宿とかまでならチャリで行くよ。
しょ>乗り物に関してこだわりはないですか。
増>カッコいいなと思うのはあるけど、やっぱ飲むからね。飲めなくなるくらいだったら・・・。罰金100万だからね。チャリも無印のママチャリで、デカいカゴ付けてこぎまくってる。坂さんの折りたたみチャリはすっごいタイヤ小さくて、こいでんだけど全然進んでないんだよ(笑)。後ろから見たら何にも乗ってない様に見えんの、チャリ小さすぎて。サーカスの熊さんの自転車みたいになってる(笑)。

■スポーツは何かやりますか?
増>やんない。観戦もしないな。オリンピックとか他の国と競うのは観るけど。
しょ>じゃあ、国内で好きなチームとかは無いんですか?
増>ファイターズは好き、北海道だからね。他は特に無い。ジャイアンツもタイガースでも優勝したって俺には一銭も入らんからね(笑)。西武はやや嬉しい、ちょっと安くなるから、その位だね。K1とか観ちゃうけどね、痛そうだなーと思って。空手を子供の頃7年やってたの。ちゃんと段を取ってたら今3段くらいじゃない、同期の奴らがみんな3段くらいだから。俺、昇段試験のお金、全部ゲーセンで使ってたから昇段してないの(笑)。
しょ>大人になってからは全然やってないですか?
増>自衛隊で1年半くらい死ぬほど鍛えられたから。それで銃剣道の初段取ったの、銃の先に剣つけて突っつくヤツ。でもあんな物ありえないでしょ。この距離で敵の兵隊と会うわけ無いじゃん(笑)。今の時代ミサイルだっつうの!銃剣使う機会なんてない(笑)。やっぱりねたまに武道とかボクシングとかはやりたいと思う。
二>まーね、ライブであれだけ汗かいてりゃスポーツだもんね。でもそれでも太れる坂さんって・・・。
増>ドラムって疲れちゃダメなんだって。ジャズドラマーとかは爺さんでもデカい音出すじゃん。基本的な手首と体の動きだけで叩くから、何時間叩いても疲れないのがいいドラマーなんだって。ロックドラム自体が道理に合ってないっちゅうかさ。坂さんが古武道の本読んでね、それをドラムに取り入れてどうのこうの言ってたけど、取り込まれた気配がない(笑)。まったくない。
しょ>こないだ坂さん遊びに来てましたね、上半身裸になってて。
増>相撲取りだからね。
二>Queのパス貼って、シェルター行ってたから、裸で。「俺のTシャツを返してくれ」って言いながら。
増>おとといも上半身裸で「俺のTシャツどこいったか知りませんか?」って言ってたから(笑)。

■洋服のこだわりはありますか? どこで買いますか?
増>このGパンはユニクロかな、女物で25インチ。これいいよ3000円くらいだから破けてもいいし、そうそう破けないけどね。スライディングもしないし(笑)。
しょ>増子さんがカッコいいと思う着こなしのバンドマンとかいますか?
増>いっぱいいるよ、若い子らはやっぱオシャレ、でも同じようなカッコしてるね。みんなカッコいいなと思うものを真似してる格好をしてるから、見分けが付か無くはあるよね。まあでもオシャレだよ。ただバンドっぽくは無いね。
しょ>自分発信というよりも、カッコいいと思う物を真似して着てるって感じですね。
増>俺さ、いつも思うんだけど俺がスタイリストだったらそいつに似合う服選ぶときに、芸能人だったら誰に似てるかを見て、それに似たような服を選べばそいつには合うよね。だから自分が何着たらいいか分からない人はそういう風にして考えればいいんじゃない。坂さんとかになると白いランニングしかなくなっちゃうけど(笑)。それにリュックかって(笑)。
しょ>ちょっと前のアー写で坂さんのピンクシャツの着こなしはカッコ良かったですが。
増>マツケンか?という感じだったけど。あれねマネージャーに買ってきてもらったの。ピシッとした物を自分で買おうと思ったら、黒いタンクトップ買ってきたからね(笑)。黒い裸の大将だからね。
二>リキッドかなんかで坂さんオーバーオール着てたよね。
増>あれも作ってくれたの、10万くらいする革のヤツ。もう太っちゃって着れないんだよ、もったいない皮が。怒ってるよ牛も(笑)。
しょ>増子さんはどこかで見てカッコ良かった物じゃなく、完全に自分の着こなしですか?
増>そうだね、まぁ着たいもの着るっちゅうか、もう自分に合うものは大体分かってるから。でも合う物というよりは着たいもの着てる。やっぱシルエットがいい服が好き、シルエットすべてでしょ。何かに憧れてって事はほとんどないからね。さっきも言ったけど、もう配られたカードはある訳だから、そのカードでハッタリかましてくしかないよ、たとえブタでも勝てる時はあるから。カッコいいカッコ悪いって、「若いからカッコいい」「若くないからカッコ悪い」は無いからね、男も女も。永ちゃんみたいに、カッコいいも突き抜け過ぎるとカッコいいを通り越して、もう笑えてくるみたいな(笑)。カッコ良すぎておかしくなっちゃう事もあるからさ。ああいうのはやっぱいいよね、突き抜けてるっていうか、素晴らしい。

CLUB Queは本当に色々と怒髪天にお世話になってます。その中でも関わりの深いColors of Lifeと10/31,11/31に行われるディスカバリージャパン、そして66NITEについての経緯や思いを語ってもらいました。

■音楽以外の活動、Colors of Life(※22)について
増>あれは面白かった。
しょ>映画はその前にもやってたんですか?
増>あれの前もちょこちょこ出てる、ちょい役で。Colors of Lifeはほとんど役作り無いからね、ほとんど素だから、俺のまんまでいけるように作ってある。映画はやっぱ大変だわ。人の頭の中の物を再現しようと思ったらやっぱり難しいと思うよ。
しょ>Colors of Lifeは準備段階は口出ししなかったんですか?
増>あれは台本から意見してやり取りしてるよ、ストーリーから。もっと複雑なストーリーだったんだよね。それやってると予定の4倍くらいの予算かかっちゃって、大変な事になるしそんなに出来るわけが無い。はじめ20分だったの、絶対収まるはずがないと。台本読んだらね。結局20分で収めるんじゃない方向にもっていったから。あれは財産だからね。
しょ>監督側をやりたいとは思いませんか?
増>思わない、やってくれって言われたらやってもいいけど、撮れても面白いものは1本ぐらいだと思うな。本の話とかも何個か来たりしてるけどね。自伝とかだったらいいけど、やっぱり自伝みたいな物も現時点では出したいとは思わない。言えない事の方が面白いじゃん、じゃあ出しても意味無いじゃん、言える範囲だと。しかも生きてるしさ、死んだ後に出してくれればいい、ああそうだったのかと思えるし。映画で物語一個作るのも曲作りと一緒で、そうそう長い尺の物は出来ないと思うからね。
二>キュウちゃん(クハラカズユキ)の本の発売会、行ったんだって?
増>そうそう黙って並んで来ちゃった。本読んだけどさ、あいつうまいよ!やっぱり本出すだけの事はあるよ、すごい面白い。うまい事書くね、独特の文体でね。
しょ>えっ、じゃあサイン会並んでたんですか?
増>行ったよ黙ってね。行っちゃダメらしかったんだけど。「来ちゃだめなんですよ」って言ってたから。そーっと並んでみたらひっくり返ってた。「うわぁー!」って(笑)。 映画も色々話来て、面白そうだって思うのはやるようにしてるけど、一番やりたいのはバンドだから。だから今後役者になろうと思ってないし、物書きになろうと思ってるわけでもないし、レーベルで儲けようと思ってるわけでもないし。・・・・・・レーベルで儲けようかなぁ(笑)。

※22:インディーズ映画。主演:増子直純 出演:山中さわお、ウエノコウジ、宍戸留美、他 音楽:ウエダケンジ&上原子友康 監督:二位徳裕
↑戻る


■10月31日/11月1日の「ディスカバリージャパン」よろしくお願いします。
増>やっとだね。やっと「騒音寺」と「夜スト」やれるからね。この2つ、もう最高好きだから、いっつも聞いてっから俺。しかも「The Fave Raves」「BLACK BOTTOM BRASS BAND」も最高だからね。これが繋がっていけばいいと思うけどね、若い世代とかにも。別にね引き継いでいくとかじゃなくて、みんな好き勝手にやればいい。好き勝手にやってる事を何とかやってりゃ、みんな何とかなる。ひとつの勝ちパターンとかさ、バカ売れするとかさ、それ以外でのバンドの勝ちパターンという物の一つを何かしら提示して行かなきゃダメだろうなとは、ちょっと責任は背負おうかなとは思ってる。バンドマンはバンドマンのまま残れるかっていうの。
しょ>今回は皆さん長く演ってる人達ばかりですもんね。
増>やっと日本がそうなっただけで、海外はみんなそうだからね。日本はロックという文化が入ってきて、ここまで成熟するまでの年月がやっと経ったのかなっていう。
しょ>ライブハウスは特別なものじゃなくなったんですね。
増>パンクファッションだってそうだよ。モヒカンなんていっぱいいるじゃん。昔はモヒカンなんてインディアンしかいなかったんだから(笑)。大体ゴスロリのカッコなんて、昔はあんなんで歩くなんて無かったんだから。革ジャンにビョウ打ってたら、「それなんですか?」って言われたからな、昔は。

■1966年生まれの世代について、世代感など。
しょ>66NITE(※23)は来年やりますよね。
二>来年2月。2/16。66年生まれって意外と多かったんだよね、東京来たときって同世代少ないと思ってたけど。
増>散らばってたんだよ。
二>以外と今になったら、しつこくいるし。
しょ>66年生まれの人達の世代感とはどういう物ですか?
増>同い年だと余計な説明要らないじゃない。テレビも音楽も同じもの見たり聴いたりして、漫画も同じ物読んできたらギャグなんか全部説明ナシで通じるってところが原点だよね。一番面白いのは楽屋なんだけどね。今時、MCでシブガキ隊って言っても若い子達知らないからね、説明もしないけど。
しょ>シブガキ隊とか同い年じゃないですか。
増>1コ上かな。
しょ>66年の前後5つくらいの10年間でも66年は異質ですか?
増>いや、それぞれにいると思うよ。66世代はたまたまみんな近くにいて意外と残ってるね。バカ多いね、丙午だから人数少ないってのもあると思うけど。2コ下とかも多いけど、それぞれにあんまり繋がりないよね。山中(the pillows)もそうだし、シミ、チバ(The Birthday)、吉野(eastern youth)なんかそうだけど、間違いなくイベントやりそうに無いでしょ。別に普通に仲もいいんだろうけど。あと、Queって箱が悪いよね、66年の人いるからね。Queを使いやすいってのが良くない傾向だね。他では絶対無いからね。
二>80歳とかになってもいそうだからな、そういう感じがあるよね。
増>面白いよ、本当に面白い。幸せだなーって思うよね。
二>若い頃は1つ2つ上がイカ天ブームとかでバーッといって、スッゲー羨ましかったんだよ。で、俺らくらいからパタンと途切れちゃったんだよね。
増>俺はあんまり羨ましいと思ったことないけど、忙しいの嫌だなーと思ってたから。
二>Theピーズとかが1コ上じゃん。
増>マモル(※24)くんとかね。
二>そこまでは人気者になるの早かった。
増>そこで一回終わったからシーンは。それも良かったんだよね。
二>かもね。だから長続きしてるのかもね。
しょ>皆さん異常なパワーだし。 66NITEやってる方々は若い頃から知ってるんですか?それぞれに繋がってたんですか?
増>そうだね、対バンした事とかはあるんじゃない。ノブ(ドミンゴス/人間椅子/PONI-CAMP)も長いしなー、南(宙ブラリ)とも長いんだよ。
しょ>ターシ(※25)さん(LONESOME DOVE WOODROWS)は?
増>ターシはここ何年かなんだけど、話では20年以上前から知ってるんだよ。まわりがターシと色々繋がってて、それが最近発覚したの。異常に繋がりが深くて、共通の知り合いものすごい多いんだけど去年まで気付かなかった。3,4年前かな、ニューロティカのライブかなんかで会って仲良くなって。ターシも俺の事をいろんな奴からいろんな事聞いてて、絶対面倒臭いヤツだと思って近寄らないようにしてたんだって。俺くらい面倒臭くない奴もいなけどね。
二>噂が起きやすいんだろうね。
増>凄いよ、もう。札幌とか行くと噂がでかくなってて。すっごいおかしな話聞いたんだけど、ブッチャーズのようちゃんがレコードで人の首掻っ切ったってゆうね(笑)。そんなわきゃない、もし切ってたらいねーよ! 常にフラットだよ、普通だよ。

※23:1966年生まれ(1966.4.1~1967.3.31)の人を集めたオールナイトイヴェント。CLUB Queの店員には最も嫌われているイヴェント。音楽的にも退化一方で、文化的価値ゼロを誇っている。当然そこには怒髪天のメンバーの姿も見られるし、CLUB Que店長の醜態も含まれているのでコメントのしようがないのが現実である。2004年10月2日から不定期におこなわれている。
↑戻る

※24:渡辺マモル。元グレイトリッチーズのボーカルで、80年代後半にTheピーズやポテトチップスとバカロックというジャンルを提唱した第一人者。それまでになかった等身大のスタイルはその後の日本のロックにおおきな重力を与えてしまった。現在はMAMORU&THE DAViESで50'Sなロックンロールを中心に展開中。大晦日にはTOMOVSKYやピーズのハルらとMTハピネスでCLUB Queの大トリをを勤めるのが恒例。
↑戻る

※25:LONESOME DOVE WOODROWSのVo&ギター。犯罪顔だけど筋の通った優しさを持つ人。映画Colors of Lifeの撮影では70年代バイカー風の恰好と言われたのを、70年代暴走族風と勘違いして、一人バリバリの恰好で参加。周囲の度肝を抜いていた。
↑戻る


「男とは?」と聞かれたら、あなたは何と答えるでしょう? 色々あると思いますが、インタビュー史上最も難しい質問に「男・増子」は何と答えるのか!? 怒髪天の核心に迫る質問をぶつけました。

■最後に、今回の作品も今までの作品を見ても「男」と付くものが多いのですが、ずばり男を=(言葉)で表すとしたら。
増>今回の新しいアルバムで"男と書いて"っていう曲があるんだけど、これ一つの到達点に立ったと思ってんのね。これは凄いよサビ。これジョー・ストラマー(※26)(THE CLASH(※27))に捧ぐんだけど、「男それはスタイルや性別じゃないぜ、男それはアティテュード(※28)、男と書いてバカと読む」っていうサビなんだけど、男とは、その性別とかね見てくれとかそういうもんじゃなくてね、生き様なんだよ、アティテュードだよ。あのジョー・ストラマーが言ったでしょ「パンク・イズ・ノットスタイル」ってね。パンクイズアティテュード、ノットスタイル。男イズアティテュード、ノットスタイル。だから性別でもない、男だろうと女だろうとそこにある生き様って物が、男か男じゃないかって事を決めるっていうね。完全にバカな曲だけどね(笑)。今って女の人の方が男らしい人多いよね、まさに完全に性別じゃないんだって事、本当そう思うよ。男とはアティテュードだから。男と書いてバカと読む!
二>ジョー・ストラマーって本当に勇気あったんだろうね、どんなロックよりスタイルが有る物のスタイルを無くせって。ある人から見たらパンクの否定なわけじゃん。
増>ある意味狂ってっからね、やっぱクラッシュが凄いと思うのは進化早かったから、躊躇無かったじゃない。こうやったらみんなガッカリするなって事も、ここら辺求められてるんじゃないかって事も、自分で分かってるじゃん。でもやりたい事やったら評判悪いわけじゃん。その辺りは最高だよね、躊躇無いもん。ちょっと、もう一作ぐらい待てやって(笑)。どんどん早くて全部ダメになっちゃってるもん。
二>サンディニスタとかリリース時は酷評も多かったらしいもんね。
増>嫌になっちゃた頃に売れてきたっていうさ。ある意味、男らしい。
しょ>結局男らしいとかパンクとかは人が決めるという事ですね。
増>そうそう、生き様だよ。その男っていう物の存在価値とか自分が何かって"男"だからね、それ以外特に無いからね。それって何なのかって事を表していくっていうのが俺の出来る事と思ってるし。今、男らしくあるっていうもの自体がダサいものになってる、だからそれをやりたい。ダサいものほど強い、ベタな物ほど折れないからね。
二>DJで歌謡曲やアニメソングかけたりするのってさ、本当は否定されるかもじゃん。そこの恐怖心とかは。
増>全然無いよ、だって酔っ払ってるもん(笑)。
二>ある種DJにおいての革命だよね。他の人でもやるようになったもんね。増子ちゃんはロンドンナイトでもやるのが凄いけど。
増>札幌まで行ってやってっからね、それもやっぱり一つの俺らが影響受けたもんだから。DJっていうのもさ、本当のDJっていうのは職人な訳じゃん。ピッチだのBPMだの合わせてちゃんと曲つなげてるわけじゃん。それがやっぱりDJなわけよ。GUEST DJって何かっていうと、そこを担ってる訳じゃなくて、それ以外で出来ない所を求められている訳だから。自分に何が求められてるかって事を自分で認識して、それをきちんと求められてる所に球を投げれるかどうかって事なの。完全に俺にはカッコいい曲かけて欲しいなんて、誰も思ってないからね。グレートマエカワ(フラワーカンパニーズ)もさ、ラジオ体操とかフォークダンスとか、かけてやってるじゃん。あれは「やるなー」と思うね。
しょ>電気屋ソングなんかをかけるのは、本職じゃない事をやる事に対しての照れがあるのかと思ってましたけど。
増>あー無いね。本当に好きでかけてるし、でっかい音で聴きたいっていうのあるじゃん、特にアニソンとか。でっかい音で歌ってみたいとか、それやってるだけだよ。俺、何かやるとき恥ずかしいとか思った事ほとんど無いよね。シラフで人の結婚式のスピーチするのとかは恥ずかしい、あれぐらいかな。恥ずかしいなーと思ったりとか緊張した事はほとんど無いね。だってライブで緊張するって言うけど分かんない、今まで練習してきた事やればいいんだよ。練習してないこと急にやれって言われたらさーそりゃ緊張するさ。さんざん練習してきた事に、さらにその気分も交えてやればいいだけだから緊張する訳が無いもん。レコーディングだってそうじゃん、やり直せるじゃん何回でも。
二>裏をかえせばそれだけ練習してるって事だよなぁ。
増>練習もしてるよ。テレビ出ようが何しようが緊張することは無い、大概の事はやり直しきくからな。上手い事やろうとするからダメなんじゃない。基本最初っから上手い事が何なのかなんか分かんないから、失敗しないことが上手い事なんて思ってないからね。
しょ>「失敗しないことが上手い事と思わない」というのは今の自分にすごく響くし、「男らしくある事がダサいものになってるから、それをやる」という事を、僕も大事にしたいですね。俺も「男子たるもの」の精神に恥じぬよう精進します!

※26:坂さんが人生のモデルにしようとしている人。THE CLASH時代は大げさな言動や行動もあったけど、意外と自然好きだった事に全ての正義が込められている気がしてなりません。存在感の高さと普通の人というのが同時に存在するという事を証明してくれました。永瀬正敏、工藤夕貴が主演した映画「ミステリートレイン」に出演したり、映画にも話題提供しています。02年12月22日没。
↑戻る

※27:みんな大好きでしょう。与えた影響と音楽性が広すぎて、それぞれの聴き手の捕らえ方が全く違うというのも他には無いくらいですね。パンクを超えた生粋のパンクバンド。このパターンは滅多に無いですね。奇蹟のバンド。カッコよすぎて大変です。1976~1986まで活動。
↑戻る

※28:アティチュード [attitude] 姿勢、身構え、態度
↑戻る


今日は色々な話を聞かせて頂き、ありがとうございました!

ランチを食べながら2時間近くインタビューにお付き合い頂きました。会話の節々に普遍的だけど経験した人間にしか語る事が出来ない真理を感じました。 バンドマンでも、ライブハウスの店員でも、石油王でも、フリーターでも、男も女も、自分も、あの娘も、生きていれば誰にでも通じるであろう言葉がたくさんあります。 怒髪天というバンドが今後のバンドマンに与える影響はとても大きく、これから全国のバンドマンに新たな道を示してくれるでしょう。 僕らの時代に怒髪天がいるんです!これは体感しないともったいない。いっしょに楽しまないと絶対後悔しますよ!
[CLUB Queニシジマショウジ]

<おまけ>
「酒燃料爆進曲」なんてタイトル、怒髪天以外に誰も付けられない!そう、怒髪天と切っても切り離せない物といえばお酒!?そこで怒髪天メンバーの酒占いをやってみました!これが当たるんです。 増子さんからも「これはもう恐ろしい」とお墨付きをもらった酒占い、ぜひ皆さんもたしなんでみて下さい。

お酒占い①  *これはホントあたってました。店長二位も唸るほどあたる!?
お酒占い②
>>増子直純上原子友康清水泰而坂詰克彦