--20周年の日本武道館公演が控えるわけですが、会場の規模が大きく なっている中、Queは外せない、というそのスタンスは珍しいですよね。 山中:いや、でもね。別に毎年全国ツアーをしてると、地方でQueくらいの 規模の場所はやってるから、Queのキャパでライブをすることを特別なこと には感じていないかな。 --でも、こと東京に於いては、チケットを取るのも大変なバンドですし、 セットも規模の大きなステージを想定したものだったりもする中でのQueで のライブとなると、もはやそれこそがthe pillowsの"こだわり"なのかなとも 感じます。 山中:実は大きな場所の方がむしろ特殊だと思っているし、日本武道館な んて「すごいな」って。武道館でいいライブ出来る気がしないもん(笑)。ガ チガチだよ、きっと。山中さわおのこんなか弱いボーカルは初めて見た!み たいな状態になるとは思う(笑)。Queに出る前の日って、ノドを大事にケア しなきゃとか、MCで何を言おうかなとかも考えてない。失敗してもいいとも 思ってるし、そこに気負いがないというか、そこでしか出来ない良さがある んだよね。 --素の自分でいられる? 山中:そうそうそう。そのときだけはすごく。お客さんも全員、オレから肉眼 で見える。表情まで見える。もちろんオレの表情も見える。そういう間柄で やれる悪ふざけと、大きいとこでやる悪ふざけはやっぱり意味が違うんだ よね。大きいところは…どうしてもショウっぽい感じになっていくよね。その ショウっぽいのは嫌いじゃないんだよ。つまり違うものと言えば、違うものだ と思う。本当に"the pillows通"みたいな、何年も見ているマニアはきっと Queでのライブは見たいんじゃないかと思うね。前の日から考えたMCはし ないからさ。大きな会場では、すっごい(ショウとしてライブを)考える。もち ろん考えていた通りにはいかないし、その通りにやろうとしたら絶対に想像 と会場の空気が違うから大失敗するんだよ。そこは気をつけるんだけど、 一応、自分を安心させるためにも始まりから終わりまでの流れは考える。 それくらい神経質になるんだよね。特に大きい会場は撮影も入るから記録 が残るし、理想通りのカッコイイ自分でいようっていう邪念も働くんだけど、 Queではそういうのがない。だからマニアはそっちが見たいんだと思う。武 器が違うんだよね。大会場とQueとでは。音楽を超えた部分というか。the pillowsを見に来ているというよりも、真鍋くんとシンイチロウくんと僕を見に 来てるっていう感じ。なにがあっても大丈夫な安心感がある人が集まって いるという感覚でやってるんだよね。 --なにがあっても大丈夫? 山中:たとえば歌詞が飛んじゃって「ゴメン、もう1回やらせてくれるかな」っ て言ったら「今日は面白いものが見れた!得した!」って思うようなお客さ んが集まっているような感覚。それを武道館でやったらマズイだろうけど ね。それにお客さんとの会話のキャッチボールがQueだと出来るけど、大き い会場では前の方だけにしか会話が聴こえなくて後ろの方のお客さんが 取り残されるから(会話のキャッチボールは)やらないんだよね。それに Queだと終わってからその場で飲めるじゃない?それも重要(笑)。とにかく Queでのライブは"楽しい1日"だよ。 --海外でのライブは日本とは違う? 山中:海外は…厳しいですよ。音響設備が悪すぎて。機材を全て持ってい くわけにもいかないから現地のレンタル機材でやるしかないんですけど、 凄まじくレベルが低いし、扱う現地のスタッフもレベルが低いので、モニタ ーなしでやっているような気分ですよね。もうまともにライブすることも出来 なくて「なんだかわからないけど、オレらはthe pillowsですよ」ってthe pillowsのロックのエネルギーをただオラオラで出すだけで。デリケートなも のはないです。しかもライブハウスと言っても1000人クラスの場所でホール っぽい感じでもあるし、人種差別もあるんですよね。だからデリケートなこと は忘れて、ただただライブをしてくる感じですよね。 二位:逆にすごくライブに集中出来そうだね。 山中:いや~…。音楽的な感じじゃないです。 二位:そうなんだ。スポーツっぽい? 山中:格闘技みたいなもんですよ。ボクシングで殴られているときに、殴ら れているのが本当に好き、というよりは「これを越えてなにか達成感を得た い」ってことであって、殴られることを喜んでいるわけではないでしょう?苦 しいけどアスリートって「これを越えたらなにかがある」っていう感じでやっ ていると思いますね。シアトルにクロコダイルカフェっていうニルヴァーナが 出ていたことで有名な老舗でやったときは人生で体感したことのないよう な暑さだったんですよ。冷房がないのに、お客は満員で会場はパンパン で。ローディーもいないから自分でステージでセッティングしてたらすでに 滝のような汗。ライブでも、もう音楽じゃないっていうか。ツライってことしか 頭にないし、暑さに負けそうで「もうやめたい」って思うくらい地獄だったん だけど、大ファンで熱狂している人が前にいたんですよ。アメリカには2年 に1度くらいしか行かないし、待ちに待っていてくれた人がいるから、ずっと 「負けるな、オレ」って。「どうでもいいっていう気持ちになるなよ」って何度 も自分に言い聞かせながらのライブだったから。もはや音楽じゃないんだけ ど、達成感はあるんですよね。それは自分の長年やってきたことの価値を 証明してくれることのひとつにはなりましたね。 二位:じゃあ、音楽をやるという意味では日本の方が充実感は高いってこ と? 山中:それはもちろんですよ。機材にしても音響設備にしても。それにアメ リカのお客さんは歌詞をわかっていないですからね。やっぱり本当の意味 での共感は出来にくいとは思う。僕らが洋楽を聴いていても、大好きな曲 は歌詞を見るように、向こうでも僕らの曲の歌詞を見てくれて、一緒に歌っ てくれるんです。でも日本人のようにダイレクトに共感してもらうのは難しい じゃないですか。そこはしょうがないし、僕らは外タレなんですよね。向こう では。the pillowsがここに来てる!ってことを楽しんでる感じですよね。 --アメリカの人たちが日本の音楽に注目しているという感覚はありまし た? 山中:無いです(笑)。思った以上に人種差別が残っている国で、だからこそ オバマ大統領のことはビックリしたけど、やっぱりそういう国で。僕らがいく ら1000人クラスの会場を一杯にしたとしても、全米から言えばごく一部の 変わり者の、すごく知的レベルの高い人たちがジャパニーズ・カルチャーに 興味があって見に来てるという感じでしたね。日本ではちょっと色モノと言 われるアーティストがカルチャーとして面白い、オルタナ感のあるものがご く一部のマニアにウケたってことだと思いますね。だから英語がペラペラで もなんでも関係ないですよ。カルチャーに着地することですよね。オルタナ 自体が"ピンポイント"っていう意味ですから、オルタナ好きは大体アジアも 好きですよね。ウィーザーがジャケットに浮世絵を使っていたり、ピクシーズ もスパニッシュの曲があったり、ニルヴァーナも少年ナイフが好きだったり。 英語圏ではないものに興味を持つようなオルタナ好きにアピールする意味 ではいいと思うんですよね。異種格闘技戦も甚だしいけど、実は異種だか らこそウケるんだと思いますね。だから怒髪天とかもアメリカでは人気出る と思いますね。 --the pillowsと怒髪天のカップリングでの全米ツアーはすごいジャパニ ーズ・カルチャーとして大きな影響があると思いますね。 二位:個人的にはWBCを凌いだりして(笑)。 --最後にモチベーションに対する質問です。 二位:さわおくんは数あるバンドの中でも、フロントマンとして、よりお客さん の様子を見ながらやっている人だと思いますが、ライブハウスでやる時って ある程度、お客さんのキャラクターとか性格とか目的とかが割と近い人が 集まるだろうし。大きくなればなるほどそれが色んなタイプの人になってい き、武道館では1万人くらいの人達が来ると思うんだけど、その大会場に 向かって、色んな人たちがいる中での気持ちの作り方っていうのはどんな 感じ? 山中:それは武道館だけじゃなくZeppでやるときもそうなんですけど、Que ではリアルタイムで集まっている人間のキャラクターをある程度把握できる というか、コミュニケーションを取れると思っているんですけど、Zeppになる ともうそうはないというか。パーソナルな付き合いというよりはオーディエン スという大きな存在がいて「the pillowsが演奏するよ」という感じだと思うん です。武道館はよりそうなると思うし。もちろん僕の基本スタンスは一方的 に、勝手にやりたいんですけど…。 二位:なるほど。極端に聞くと「全員を喜ばせてあげよう」と思うのか「本当 にオレたちをわかってくれるお客さんに届けばいい」と思ってやるのかって 聞いたら? 山中:今の質問だともちろん「本当にわかってくれる人にだけ」ということに はなるんですけど、本当はどちらでもなくて、自分が喜ぶことばかり考えて ます。僕が自分を満足させることに価値があるからみんなが付き合ってく れてるんだろうなっていうのを勝手に想像をしているんです。基本スタンス は自分が喜ぶことばかり。でもそれをみんなに望まれてると思うんです。 the pillowsの山中さわおがみんなを喜ばせるように工夫してライブをしてい るっていう姿は望んでないと思うんです。勝手にやってる。それを見に来て っていう甘えがあって成り立ってるのかな?って。 二位:甘えじゃなくて、それこそ攻めじゃないかなぁ。 山中:たぶん。みんなにまんべんなく理解されようっていうことはあまり上 手くないし、やったところで逆効果になるだろうし、それは望まれていない と思うんですよ。本当にそれを望んでいる人がいたら、ライブに来なくてもい いと思うし、放し飼いにしておいてくれれば勝手に「ここ掘れワンワン」って 宝物があるところに連れて行ってあげるし、オレ1人ではムリでも真鍋くん とシンイチロウくんが必ずスコップを持ってくるから何とかなるよっていう感 じですね。 二位:いいですね~。それがバンドの強さですよね。 山中:そうですね。だから基本は自分ばっかりですよ。それがQueだとして も。オレが楽しむことばかり。Queは緊張しないので、楽しいんです。Zepp はそこそこ緊張するんですよね。楽しいっていうのとはちょっと違う。達成感 を得たいというか、自分の価値を確信したいっていう感じで。Queは本当に 楽しいっていう概念。たとえば、昔の自分を彷彿とさせるような少年とかが いて、前で泣いていたりすると引っ張られることもあったりする。それは大き な会場では物理的にムリなんですよね。 二位:勝手にやっているけど、与えられることもあると…。 山中:それはある。本当にあるんだけど「全然ない」って言いたい。キャラ的 には(笑)。そっちが基本だってことを知っていて欲しいというか。関係ない よっていう風に思っていてくれたら楽っていうのはある。もちろんキャッチボ ールがないと、映画を見せているような、完成したものを見せているわけで はなくて、どうしてもライブは現在進行形ですから。今日はこういう感じっ て。君たちがそうだから僕もこんなライブが出来たっていうのはあります。 そこはお客さんと合う感覚でやっていきたいなというのはあります。 --Queも武道館も、どちらのthe pillowsも見逃せないですね。 二位:ねっ。ものすごく楽しみですね。 2009年09月16日(水) 日本武道館 " the pillows 20th Anniversary LATE BLOOMER SERIES 06 「LOSTMAN GO TO BUDOKAN」" open 18:00 / start 19:00 アリーナスタンディング・スタンド座席指定 ¥5000 チケット:7/5~ 発売 問) ディスクガレージ:03-5436-9600 |
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