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札幌出身。1985年KENZI & THE TRIPSでデビュー、その頃ロンドンのロックからモロに影響を受け湧きあがった日本のパンクシーンの活性化と共に、バンドブームの先駆けを作り、当時カルチャー誌だった宝島を筆頭に音楽誌を賑せた。その後ケントリのドラマーだった佐藤シンイチロウと北海道から上京した山中さわお、真鍋吉明とthe pillowsを結成。新たなロックシーンを底上げし、新しい波を起こしたものの92年に脱退。サウンドプロデューサーというポションも忙しくなる中、平行して様々なバンドでベースを弾き続けた。それは規模や知名度に関わらず自分の感性で面白いと思った音楽に飛びつくという、実に野性的、本能的な活動を繰り広げてきた。技術と知識の高さと、ハイセンスな音楽性とパンキッシュなスピリチュアルを同時に、そしてバランスよく持ち得る稀にみる人物。

自らが歌うアコースティックライブも特筆するものがある。パンク上りで一見、怒りからロックに携わった人と捉えられることもあっただろうが、優しさと豊かな表現力は、逆に透明感というアンバランスで繊細でアートというに相応しい空気をもっている。耳にやさしく憂いを持っていて、聴く者を包み込む不思議なマジックのような音楽なのだ。一度耳にして欲しい。溶け込むように体の内側まで入ってくる心打つ音楽です。

ベ―シストとしては、Que的にはレピッシュの杉本恭一と組んでいたアナラーズの活動が記憶に焼き付いているが、堂本剛や長渕剛など大舞台での活躍も強いインパクトを残している。ただそこに留まって胡坐をかかずに次へ行くことを躊躇しない。パンクなのか男気なのか、決してお金というところで安住するミュージシャンではない。だから信頼できるし、同時に研ぎ澄まされた感性を失わないのだろう。とにかく彼のいる所(音楽)は常に新鮮なのだ。プロデューサーとしてもGOING UNDER GROUNDや小泉今日子など数々のアーティストを手がけているし、音が出る前に人間力ゆえのキャスティング力に感動してしまう。

今月はそんな上田ケンジが2本の異なるライブを行う。ひとつは東北地震の時から続けている「電気が無くても唄は歌える」。まさに彼の生き方にリンクするところがあるんじゃないかな。ロックってやつは、電気があれば贅沢に使うけど、無いからと言って音楽をやらない理由にはならないし、無いなりの音楽っていくらでもあるっことを証明するためのイベント。
そしてもう一つは、dipのヤマジとフジロックの深夜に偶然に発案してしまった「3月のバンド」。この欲のないネーミングにこそ、慾のありすぎるサウンドが俄かに想像できる。歌うは今話題のBUGY CRAXONEから、すずきゆきこ。対バンには盟友レピッシュのマグミの現在進行バンドTHE BREATHLESSと天才TOMOVSKY。三者三様の音の魔術師が何をもたらすか。Que25周年イベント春の最重要戦。これは凄い夜になるでしょう。

なにしろQueで作った映画「Colors of Life」の音楽を愛で担当してくれた人。多彩でピッタリの音を提供してくれたあの恩は一生忘れる事が出来ないのです。