BACK
2008.3.16
Zher the ZOO 3rd.Anniversary ~On the World~
「スクール・オブ・ポップ レッスン3」
ザ・カスタネッツ/HICKSVILLE

代々木から北風は去ったようだ。代わりに少し暖かい風がゆるやかに吹き抜けていく。街を行きかう人の表情も心なしか柔らかくなっている気がする。春の訪れを感じさせる季節、人々の心までも温かくしてくれるようなライブが豪華な2組によって行われた。開演前の会場は、ライブを楽しみに待つ観客たちが放つ楽しいオーラによって、春らしく和やかな雰囲気に包まれていた。初めに登場したのは「HICKSVILLE」。大人の落ち着きと、童心を忘れない楽しさの両方を感じさせるムードでステージ上に登場し、笑顔で「ヒックスヴィルです。・・・ヒックスヴィルです。」と、うなずきながら繰り返す姿が小気味よく楽しくて、既に客席には愛のこもった笑い声があふれていた。ボーカルの真城 メグミがシェイカーや小太鼓を使ってリズムを取りながら歌い、木暮 晋也と中森 泰弘のギターが音を紡いでいく。真城の、精神的な深遠さをも感じさせるような深みと伸びのある声は、ワンフレーズ歌っただけでも観客たちを心酔させてくれる魅力を備えているので、思わず歌に身を委ねてうっとりとしてしまう。中森のメロディアスで温もりがあるギターソロや、柔らかさと優しさをたっぷりと含みつつも決してブレることのないギターの二人によるハモリは、3人の心のゆとりや3人がステージを楽しんでいる気持ちを伝えてくれる。3人が顔を見合わせてニッコニッコしながら演奏している姿や、真城のカラッと明るく可愛らしい笑い声は、より一層楽しく心豊かなステージを作り出している。「水たまりに/生まれたばかりの/美しい朝が映る」と歌い上げる姿そして音は、その情景を心の中に映し出させてくれる広がりを持っていて「いつまでもこの音の中をたゆたっていたい」と思わせてくれるほど心地のよいものだった。そして次に登場したのは「ザ・カスタネッツ」。演奏が始まった瞬間からズシっと心身に響く、圧倒的な存在感と安定感を持っている。特にドラムとベースがそれぞれ力強く、またリズム隊の強力なタッグを感じさせる演奏なので、安心して聴くことができる。明るく元気のある声で歌うボーカルの牧野 元は、あふれる親しみやすさで観客たちの心を惹きつける。「今回の曲は・・・まあ、なんだ、ニート?ニートじゃないけど・・・(そんな人たちへの)僕からの応援歌ですよ」というギターの小宮山 聖からのメッセージの後に披露された彼の新曲は、激しく男らしいギターのうねりから始まった。「先の見えるもんばっかじゃ面白くないし」という等身大のメッセージがこもった力強い曲だ。演奏後「この曲(激しくて)、すっごい腕がパンッパンになるんだよ」と自らの腕を揉む小宮山に対して牧野が 「コミーが命の次に大事な腕をパンッパンにしてギターを弾いたおかげで、見てみろよ、ここにはニートが一人もいなくなったぞ!」と叫び、笑いをとっていた。MCでの笑いと気持ちのこもった曲で最高に温かく、熱い空間を生み出している彼ら。最後のアンコールでは「3月はいろいろ失くす季節ではありますが、次へ!!という気持ちで帰っていただけたら、と思います」という気持ちをぎゅっ!とこめて演奏してくれた。「今、僕はここで/今、君はどこかで/生きてるんだ!!/ずっとずっと、続くのです/続く、続く、続く・・・/続け!続け!続け!」と、出会いや別れや春の切なさや人生を内包した曲を、汗のしぶきをあげながら歌い、観客たちの春からの日々を力いっぱい勇気付けてくれた。「豊潤な美しさと力強さ・そしてあふれるユーモアを持つ二組が心をいっぱいにこめて観客たちに語りかけるかのように歌い、MCをし・・・それによって観客たちの心がキラキラになる!」という、シンプルで最高!な相互作用が繰り広げられていたイベントだった。これでみんな、春からの日々も大丈夫!
[文、菅真由子/撮影、だるまっち]


HICKSVILLE


ザ・カスタネッツ
BACK