水色の反撃 (MV)

※篠塚将行(しの),菅澤智史(ガス),琢磨章悟(しょ),栗原則雄(ノリ),Que 後藤瞬(後藤)の表記で進行します。

 

後藤:そんな1stアルバムから半年しか空かず、2ndフルアルバムがリリース。1stの『記念になれば』という所から始

   まって、いよいよ2枚目を出します。これはどういった経緯なのでしょうか。

しの:いやもう、ただ曲があったっていうのと、あともう一つ、冬真が『出そう』って言ったから。冬真が楽しくなっ

   ちゃったんじゃない? 俺も「悔しいから、もう一回録音したい」っていうか、曲は残したかったしね。全然あん

   まり違和感なく、「じゃあ、やるか」と。

後藤:特に、このアルバムはファンの人から結構人気があるアルバムだと思うのですが。

ガス:不思議だよね。これ、本当の意味での「1テイク」の曲ばっかりだった気がする。

しの:あ、そうだね。

ガス:これ一日で録ったんじゃなかったっけ?

しの:全曲、歌まで一日で録ったよ(笑)。

ガス:レコーディングって、録音するじゃん? そこから聞き直すじゃん? 普通は。でも、聞き直さない、ってルール

   で次々、録ったアルバム。

しの:聞き直さない。もうどうせ直さないし、聴いても上手くなるわけでもないし、聞き直す時間に意味がないっていう

   か。聞き直したら(レコーディングが)無意味に倍の時間がかかるじゃんって。聞き直さなかったら、半分の時間

   で済むじゃんって思って。

後藤:賢いようで…。

しの:どう考えてもアホだよ(笑)。

ガス:悪い意味で、前しか見てなかった(笑)。

しの:演奏して『あ、弾けた。じゃあ次行こっか。』ってね。聞き直

   さずにずっと録ってたよね。

しょ:そう、本当に一回も聞かなかったもんね(笑)。

ノリ「17才」とか、今までやってたアレンジと全然違うイントロで

    まって『え! 違くない?』って、そのまま終わった(笑)。

一同:(笑)

しょ:本当ですか(笑)。

ノリ:俺も、『違くない?』って思いながらやって、でも誰も振り返らないから(笑)。

ガス:これはあれだっけ、下北で録ったっけ?

しの:そうそう、普通の練習スタジオ。友達の宅録で。友達っつーか冬真の友達の宅録っつーか。俺はその時初めて会っ

   たけど。

後藤:曲間の繋がりとか、凄く計算されているように伺えますが。

しの:逆だよね。何も考えてない。

後藤:要は「一日で録りきって、同じテンションだった」という事でしょうか?

しの:そうそう。それだけ。

後藤:ちなみに、このアルバムの中には、ドイツオレンジ時代の楽曲はあるのですか?

しの:無いかな。このアルバムから、このバンド組んでから出来た曲ばかり。自分達の中でも、実質1stアルバムみたい

   な感じで。もう一枚録音して、自分達だけの1stを作りたかった、っていうのは皆あったと思うよ。期間短いけ

   ど、無理してでもやりたいなと思ったのは、前のアルバムがどうしても、ドイツオレンジの曲、だしなぁという。

後藤:何か、特に思い出深い楽曲はありますか?

ガス:レコーディングはもう振り返らずにやったから、曲単位っていうよりも、全体ですね。

しの:思い出なんか、ないよね?(笑)

ガス:思い出を振り返る暇も無かったよ。(笑)

しょ:キーワードだったよね、「振り返らずに行こう」って。

しの:ただ「聞き直さない」だけなのに大袈裟だよな。(笑)

後藤:前作は、「弾けないまま終わる」というスタイルでしたが。

しの:2ndはもっと酷いよね。前は弾けないまま完成したけど、2枚目はそれに、振り返らないがプラスされたから。

   もっと酷い。雑だよね、考え方が。

後藤:という事は、1stも2ndも、ライブアルバムに近い状態という事ですかね?

しの:結果的にそう。記録って感覚が俺は強かったから、上手い下手も関係無く今の自分達のまま、それで誰かが好きっ

   て言ってくれなくても、変な話「パンクバンド」だし、なんか出来もしない事とか、ありもしない架空のなにかを

   作り込んで、って、作品って言えばそうだけど、言っちゃえば嘘とも言えるじゃない? 嘘ついてまで自分を良く

   見せても、あんまり意味が俺には無かったっていうか。なんかそれを仮に好きになってくれても、その人に悪いっ

   ていうか、なんか、詐欺みたいじゃね? ってずっと思ってて。だからこのアルバムで『嫌われよう』みたいなの

   はあったのね。ニルヴァーナじゃないけど、このアルバム、わざと嫌われようみたいなのがどっかであって。前の

   アルバムで刺さってくれた人がいてくれただけに、次は無いだろうと思ってて。このアルバムでもう、ちゃんと嫌

   われようって。本来ある自分たちの姿に戻ろうみたいな。『やっぱあんま良いバンドじゃねーな』みたいに言われ

   よう。みたいのがあったんだよね。ライブが生きるって意味なら「本当の自分達でいよう」みたいな。

後藤:なるほど。

しの:実際2ndはあんまり良くないって言われたしね。余談だけど、その時PV作ってくれた藤井君とかに『あんまりいい

   曲ない』って言われて(笑)。それで、1曲作ってみたらって言われて「スローダウン」を書いて。後から「ス

   ローダウン」だけ足したの。あの曲だけシングルみたいな感じっていうか、1曲目だけど、自分の中では人生最後

   の曲みたいな気持ちで作ってた感じ。PVもギリギリまで「水色の反撃」じゃなくて「スローダウン」だったんだけ

   ど、「シーソーと消えない歌」のPVに出てくれた主演の女の子が『「水色の反撃」のが良い曲だね』って一蹴して

   (笑)。藤井が凄い言いづらそうに『そっちでPV作っていい?』って言ってた。良い曲の「良い」なんて、ほんと

   聴く人の感情や状況に左右されるものだなって。書いてる俺には。

 

 

【Que後藤による脚注】

 〇脚注1

 1テイク:1回目の録音という意味である。2回目をしなかったという事。

 

〇脚注2

 下北:下北沢の事。音楽の町でもありロックキッズの憧れでもある。余談だが筆者は初めて東京に来た時に真っ先に下

    北に来たのだが、緊張して何もお店に入れずに露店にあったマフラーだけを買って寂しくバスに乗った。

 

〇脚注3

 ニルヴァーナ:アメリカのロックバンドNirvana。絶対カッコいい。