浴槽 (MV)
※篠塚将行(しの),菅澤智史(ガス),琢磨章悟(しょ),栗原則雄(ノリ),Que 後藤瞬(後藤)の表記で進行します。
後藤:前作を持ってメジャーを自主的にリタイヤ。6thフルアルバム、無所属、レーベル無し。原点回帰。ワイルドガン
クレイジーからのリリースでもありませんね。
しの:一回完璧に、まっさらでやってみようと思って。このアルバムはもう言う事ないよ。
後藤:特に、歌詞にエグさが出ていますよね。
しの:このアルバム自体がもう、閉鎖したっていうかね。アルバム録ってた時は一番面白かったけどね。本当に一番最初
と一緒で。アルバムタイトルも1st(「彼女の歌はきっと死なない」)とかけて。
後藤:しょうご君はどうでしたか?
しょ:重かったですよ(笑)。全体的に人一人の裏側っていうか、一人の人間を背負う、重い内容だったので。
しの:コンセプトアルバムっていうか、このアルバムだけ曲の作り方を、極端に俺が変えてるからね。
後藤:と言いますと?
しの:普通、曲書く時ってさ、例えば本当に苦しい時とか、曲書いてる場合じゃないじゃない? もう書けなくて動けな
い状態というか。で、少し立ち直って、その時の事を思い出して曲にするんだと思うのね? どうしても、絶対そ
うなるんだと思うんだ。でも、その最中、上手くいかなかったりとか、誰かに何か酷い事を言われたりした、その
直後には曲書かないじゃない? それをもう意図的にやったの。絶対おかしいんだけどね、生活的には。危ない時
だけに曲を書くっていう。ちょっと落ち着いたときには曲書かないという自分の中でルールを決めて(笑)。
後藤:ある種、正常な判断が出来ない状態で、あえて書くと。
しの:そう、あえて作るの。そしたらどうなるのかな?って思って。物凄くリアルなものになるのか、それとも正常な状
態じゃないから、結果誰にも届かないものになるのか。でも、どっちでも良くて。一個前のアルバムで、誰かに
「メジャーの中のロックバンドのシーンで『唯一片手でドラム叩いた、骨折した状態でレコーディングしフルアル
バム作った、てかなったCD』」だって言われて。そうじゃなくて、だったら表現としての実験をしてみたいとい
うのもあったし。リアルって意味では、曲ってもの自体がワンクッションある、時間が経ってると思うんだよ。そ
の最中に出来る、もう危ういものっていうか、危険な状態に近い時に出来るだけ曲作ったら、ものすごくリアルな
曲になるんじゃないかと思ったし、その最中にいる誰かにとって、一人じゃないっていう言葉よりももっと説得力
がでるのかなって思ったけど…どうだったのかな(笑)? でも多分、駄目だったのなとは…(笑)。
一同:笑
しの:これはもう、本当に凄い辛かったけどね。作った時は。
後藤:このアルバムは、重いですね。
しょ:演奏した時も、ちょっと怖かったですよ(笑)。
しの:良くも悪くも、このアルバムが一番好きって人は、多分俺達も
含めて多分居ないと思うんだけど、自分の中では絶対作らな
きゃいけないなと思ったアルバムだったんだよね。
後藤:「このアルバムを好き」だと、中々言えないアルバムなのでしょう
かね。
ガス:(笑いながら)ちなみに俺このアルバム一番好き…。
しの:あ、そうなの(笑)?
一同:笑
後藤:それでも世界が続くならというバンドを始めて、黒い部分やダウナーな部分だったりが、本当に研ぎ澄まされて、
絞って絞って出たアルバムなんですね。
しの:でも、俺の中では「僕らのミュージック」作った時と、対になってるアルバムなの。「僕らのミュージック」が外
側に向けて、自分の言葉じゃなくても外に届けばそれで良いっていう気持ち。あの時同時に俺、知り合いに言われ
た言葉があって『それでも世界が続くならってすっごく良いけど、どうしても共感出来ない所がある。なんでかっ
て言うと、他人の為に一所懸命なってる、しの君みたいに、俺はなれない』って言われた事があって。『自分の歌
として「僕らのミュージック」聴けない』と。そっかーって思ったんだ。けど、同時に分かっちゃったっていう
か。その話の本質とは別に、俺、自分の事歌うのが凄い怖くて、誰かの気持ちに自分の事重ねて歌ってる所がある
んだなって。っていうと、聞こえは良いかもしれないけど、それって卑怯だなと思ったの。人の話を例え話にし
て、そこに自分の気持ち乗せて、自分の事を歌わないで、って凄い卑怯だなと。これがメジャーを一回辞めようと
思ったきっかけでもあるんだけど、メジャー辞めたら一枚目は絶対俺の、自分の事を歌わなきゃ、って。そういう
歌ったアルバム作らなかったら、多分今まで聞いてくれた人に本当に失礼だなと。逆に言うと、このアルバム作っ
て、なぜか「僕らのミュージック」も歌えるようにもなったし。
後藤:あの頃、少しやってましたもんね。
しの:自分と他人って、対だったのかもね。自分の事を歌ってない罪悪感って、多分歌詞変えただけとかじゃなくって、
人の話ばっか聞いて、結局自分の意思がそこに無くなっちゃった事自体が問題で。だから、このアルバムで絶対俺
の思ってる事とかをそのまま歌ったら、それって、そもそも表現ですら無いというかさ。ブログとかと同じってい
うか。そういう罰っていう贖罪っていうかね。つまり、このアルバムは、表現ですらないと思うんだよね。レコー
ディングは記録というものの、これは悪い例というか。
後藤:悪い例?
しの:俺的には残したくなかった部分を、わざと残す。ってことかな。自虐の一種っていうか、悪い意味でね。じゃない
と自分の汚い所を見せないで、自分は嫌われるかもしれない事を避けて、嫌われないよう嫌われないようにして生
きて行くのは、俺らの音楽好きだって言ってくれた人に失礼だったような気がしちゃって。それで、このアルバム
作んなきゃいけないなと思ってた。作った事で、この前の全部のアルバムが演奏できるようになるとも思った。も
ういっかい、あの時の自分を許せるというか、俺は卑怯な奴じゃなくなったっていう、本当の意味で取り戻しす為
のアルバムだったのね。タイトルもそう付けてるけど、この最低なアルバムを作った俺は、お前が俺の曲好きじゃ
なくなるかもしれないけど、でも、人間として、どこかであったら、もう一度お前らとちゃんと話せる気がする、
聴いてくれた人と。自分たちの曲を聴いてくれた人と、もう一度真正面から、ライブ出来る気がしたんだよね。
後藤:聴いてくれた人と、自分が、向き合う為のアルバム、ですか。
しの:「少女と放火」とか、自分の小学校の時に、同じようにいじめられた女の子が家に火をつけた話とか。「傾斜」と
かはもう「シーソーと消えない歌」の一部だったフレーズの曲。シーソーが傾いてる、って意味で傾斜なんだけ
ど。その「シーソーと消えない歌」の後にくっついてる、エンディングみたいな部分の曲で。割と1stとか2ndで
やろうとして、当時出来なかった事を演奏的には入れられたと思う。裏1stフルアルバムみたいな。1stの裏みたい
な感じになったら良いなと思ってた。だから本当、好きじゃないだろうけど、俺は出して良かった。ってなんかご
めん(笑)。
一同:笑
後藤:いや、ちゃんと良いアルバムですよ(笑)。
しの:そう言ってくれると、なんだか不思議な気持ちになるよ(笑)。