奇跡 (MV)
※篠塚将行(しの),菅澤智史(ガス),琢磨章悟(しょ),栗原則雄(ノリ),Que 後藤瞬(後藤)の表記で進行します。
後藤:そんな「僕らのミュージック」が収録された4thフルアルバム。
ちなみにこのアルバムの最後の曲(「2月11日」)ですが。
しの:「ドイツオレンジの代表曲」って言われてた曲だね。
後藤:メジャーでの2枚目のフルアルバム(通算4枚目)。今回最後に
ドイツオレンジの曲を持ってきたのは何故でしょう。
しの:…自分を取り戻したかった、っていう。
ガス:分かりやすい(笑)。
しの:一回死んだのを、取り戻したかったのよね。俺ってどんなん
だっけと。変な話、このアルバムでドイツオレンジの感覚まで戻
りたかった。
ガス:だから、アルバムの最後に入れるっていうね(笑)。
しの:そう、分かりやすいよね、俺。アルバム毎にやってることが、前のアルバムから繋がってるだけ。人生と同じ、様
なもんよね。今は制作期間の話で追いかけてバンドで話てるけど、多分、俺の個人的な曲の話を、一曲一曲追って
いっても、だいたい今日の話と同じだと思うし。
後藤:だと思います。1stからアルバム毎に、日記の様に記録が続くバンドだからこそ、メジャー2ndでどう考えたの
か、気になります。
しの:このアルバムは、本当にこれはもう、ただ取り返そうっていう。…自分の感情を取り返したかったっていうか。例
えばさ、“やらない善よりやる偽善”みたいな言葉もあるじゃない? でも、“やる善”のがいいじゃん。
その2択じゃなくてさ。善人かどうかはともかく、誰に認められなくても、自分の為に、誰かに誠実でいたかった
のね俺は。偽善でもやった方が良いとかじゃなくって。自分で自分を嫌いたくないかった。
後藤:毎回、生まれ変わろうとしてますね。このアルバム全体の制作秘話は、ありますか?
しの:このアルバム、確かスピーカーの前が答えだろう、って視点で、スピーカーの前の事しか考えてない時期だよ
ね? そもそも、結成した時から全部一発録りで、なんならほぼ聞き返さないから、メジャーでも基本的にはやり
方は一緒だったの。でも、これ(4thフルアルバム)はもうね、演奏のブースにすら入ってない、俺は。アンプだ
けブースに入れて、もう一個一個、今の現代的なレコーディングの最先端だったの思うの。アンプでどういう音が
鳴ってるかが大事じゃなくて、スピーカーの前で誰かの耳に伝わらなかったら、それは本当じゃない、要は本当に
鳴ってる音じゃなくって、「スピーカーの前で、スピーカーから聞こえる音が真実」みたいな録り方してたし、結
構振り切ってやってたと思う。例えば、ライブだと結構有り得ない様なノイズギターがAメロに入ってたりとか、
ライブでやったら本当、歌が消えちゃうようなのも、ボリューム調整出来るからやろうっていう、「音源とし
て」ってのを唯一やったアルバムじゃないかな。全曲がそうって訳じゃないけど。でも、この時のリアルだった
り、自分たちが変わる為に、もう同じことを繰り返さない為に、今までやらなかったことをやってみた。っていう
か、ドイツオレンジの頃のレコーディング方法なんだけどね。
後藤:全アルバムのトータルとしてもこのアルバムが一番キャッチーですし、最も多くの人が良いと感じる音質、サウン
ドになっていると思います。
しの:そうかもね。この時は、「俺がドイツオレンジの頃に戻ること」がテーマだったし、歌重視の日記っぽい曲が多い
気がする。「白紙の地図」とかは、震災の後に気仙沼のサンマフェスに行って、震災の直後の町に行って、その時
の気仙沼の事を曲にしたんだけど。なんか、それを言っちゃったら震災ビジネスみたいになっちゃいそうで、当時
は言わなかったりしたけどね。気仙沼のフェスの帰りの車の中で作った曲で。なんか、あの頃に2つの町が、ひと
つの町に統合されたらしいのね。町と町がお互いの盆踊りの歌について、争うみたいなのがあったんだって。でも
どっちの盆踊りの曲を受け継いでいくかっていうので揉め始めたのね、震災後に。それで、気仙沼のフェスの主催
の山下君が『こんなに辛い事があって、でも震災で初めて皆一つになったのに、こんな悔しくて悲しい事の中で、
それだけが唯一の救いというか唯一の事だったのに、何でたかが盆踊りの曲選ぶだけで、また俺達はバラバラにな
ろうとしてんだよ!』って泣いてて。『震災の時に感じたアレなんだったんだ』って。そう思って、気仙沼のサン
マフェス始めたんだって。その話を聞いて、その事をやっぱ曲にしたいし、もっかい俺もなんか始めたいなと思っ
て書いたんだ。あと、「優先席」とかはちなみに「明日は君に会いに行くから」で本当は入れる予定だったやつ。
メッセージ色みたいなものが「僕らのミュージック」で振り切ったから、もともとの日記感覚に戻すっていうか。 ガス:「水たまりの成分」も前からあったよね。
しの:そうそう。「水たまりの成分」はこの頃によく思ってた事だった。決意表明みたいな。「もう一回嫌われてもい
い」自分に戻ろう、と。そういうアルバム。
【Que後藤による脚注】
〇脚注1
アンプ:ギターアンプ、ベースアンプ。ここからギターやベースの音が出る。通常ライブハウスではそのアンプから出
た音をマイクで拾い、その拾った音達をPA卓と呼ばれる音をまとめる機械で色々とやってから出したりしてい
る。説明が下手ですみません。
〇脚注2
ノイズギター:主に歪んだ音で、通常では綺麗な物では無く、耳障りとされている音の事です。
〇脚注3
Aメロ:凄く大まかに説明すると(曲がサビから始まらないと仮定して)曲の1番の最初の所。一般的に一番盛り上がる
ところがサビ。
〇脚注4
サンマフェス:気仙沼サンマフェスティバル。意思のある、むっちゃ良いフェス。
詳しくはこちらを確認してみて下さい(http://sanmafes.com)。