参加賞 (MV)
※篠塚将行(しの),菅澤智史(ガス),琢磨章悟(しょ),栗原則雄(ノリ),Que 後藤瞬(後藤)の表記で進行します。
後藤:そうやって「本来の姿」で「嫌われよう」としても、中々そうはいかず、いよいよ3枚目。インディーズ第一期は
終わり、まさかのメジャーデビュー。1stと2ndからも数曲リテイクし収録されました。インディーズでの覚悟を
持ちつつ、いざメジャーでアルバムをリリースする時の気持ちはいかがでしたか? そしてメジャーに行く事で何
か気持ちは変わりましたか?
しの:変わったら良かったけど、そんなに変わんなかったよね?
ガス:自分たちが「変わった」っていうのはあんま無かった。自分たちの中では。
他人から見たらどうかわかんないけどね。
しの:でも、この頃、しょうごが段々ベースが上手くなってきたよね。
しょ:ほんと? 嬉しい(笑)。
後藤:四人の気持ちに反して、1stと2ndの評価が高く、反して『こういう音楽嫌だな』と思う人も居たのかも知れませ
んが、それと同じかそれ以上に、「良い」と思った人たちが居たからこそ、結果メジャーに行ったんですよね。そ
してアルバムも出しましょうと。沢山の人を巻き込んでいる状態ですね。
しの:この時、なんか忙しかったよね? 気持ち的に。
ガス:周りの環境というか、関わる人が多くなったからね。
しの:そうそう。単純に人数が多すぎて俺達がコミュニケーション能力が無さ過ぎて、単純に大変だったかも。バンド的
には今思えば一番キツかった時だと思う。音楽を生んでいく事とは別に、環境が凄い大変だった気がする。
ガス:メジャーはもう、嵐の様に過ぎ去った感があるよ。
しの:俺達とは関係無く、事務所の社長とディレクターとマネージャーの意見が、よく割れてた気がする。
ガス:割れてたよね。正反対だった。
しの:あと、やっぱメジャーっていうのが俺達分かんなかったっていうのがある。
ノリ:周りの意見とかに『あー、そうですか』『そうですか』っていう…。
しの:正確に言うと、話す時間が無かったんだよね。まあ…こっちも伝えてないしね。向こうにも聞かれてないし。いつ
か聞かれるのかな? とかそのタイミングを伺っちゃってて。で、気づいたらもうレコーディングで。気づいたら
もう出すっていう。ほんとに全部俺達が悪い、周りは誰も悪くないんだけど。気づいたら、デビューしてた感じ
だったと思うな。
後藤:気づいたらデビューしてた、ですか。
しの:あの時は俺、自分のコミュニケーション能力の無さに愕然としたもん。一所懸命やってるんだけどね。普段、バン
ドだけやってると、数少ない自分の友達としか、自分の背景も分かってくれてる数人としかやり取りしないんだよ
ね。まだ会って間もない人とかとやり取りする時、『俺こんなに人と話すの苦手だったっけ?』っていうのを思い
出した(笑)。
後藤:コミュニケーションの難しさ、ですね。関わる人間の数が増えたことによる悩み、といいますか。
本質的な話ですね。
しの:あの時、「いつ話すんだろう」って伺ってる場合じゃなかったんだろうね。今思えば、言えば良かったんだけど、
何も言わずに「いつか話すタイミングが来るんだろう」って待ってたから。結局、俺達はなんにも言わないまま、
でも逆に何も言われないまま出来たアルバムだった。俺らは地方のバンドだし、逆のヤンキー文化っていうか、
『やっても無い事を否定するな』みたいな、『いいからまずやってみろ』みたいな考え方が、四人とも多分あった
んだよね。少なくともしょうご以外は絶対あったと思う。『とりあえず、メジャーってのが何なのか分かんないか
ら、一回やってみようぜ』ってアルバムだったと思う。
ガス:そうだったと思う。
しの:それでやってみて、こうなった。良い悪いじゃなくて、ただただその時の環境含めて、リアルもね。
しょ:ベース持って2年くらいとかで、バンド組んで、メジャー行って、メジャーのCDを作り始めてっていう…。
ガス:そっか、そりゃ早いよね(笑)。わかんなくて当然だ。
ノリ:曲作り、レコーディング、ライブ。ライブのファイナルが終わる前から曲作りが始まって、すぐレコーディングが
あって。ずーっと繰り返しで。
後藤:何かをしていない期間は無いんですね。
ノリ:無いね。
ガス:もうずっと何かあった。
後藤:3rdフルアルバムの中で、何か印象の強い楽曲はありますか?
ノリ:しのくん、「鮮やかに変われ」がボーカル録りがキツそうだった。
しの:冗談みたいにキーが高いもんね。
ガス:高いよねコレ(笑)。
しの:この時、レコーディングだけじゃなくて、なんか、気持ち的に
孤独だったから。孤独っていうか、どうせ誰も話聞いてくれな
いし、言えないし、どうしようもなくて。例えば、「キーが高い」とかも誰にも言えなかったんだよね(笑)。
でも言えないまま『もう、出なくても、出なくなってもいいか』ぐらいの気持ちで。
ノリ:(首を反らすように)こう、歌ってたね。
しの:そうだね(笑)。
ガス:再録してる3曲なんだけど。
しの:「シーソーと消えない歌」「参加賞」「水色の反撃」だね。
ガス:そう。全部MVにもなってる曲。
しの:俺が入れたいって言ったんだよね。
ガス:『まだ歌いたいから』って言ってたよね。
しの:そうだったね。なんとなく(事務所やレコード会社から)『メジャーデビューのアルバムに入ってる曲をやれ』っ
て言われる気がしてて。
ガス:そうそう。
しの:要は、もうなんか、バンド的にはさ、死んだバンドだと思ってたのよ。今でも思ってるけど。なんか、ゾンビみた
いなバンドだと思うのね。始まりから死んでるっていう。「死んでるバンド」って考えたら、その死んだバンドが
メジャーデビューまでするし、誰かの気持ちっていうか…誰かの気持ちを組み取んないで、誰かの気持ちを無視し
てまでメジャーデビューしてもしょうがないしな、っていうのがあって。PV観てくれた人もそうだし、PV作って
くれた藤井もそうだし、この曲入れたら皆きっと…皆と一緒にメジャーデビューしたみたいな感じに思ってくれる
と良いな、って思ったのと。あと、単純に俺が歌いたかった。
後藤:すごくしのさんらしいですね。後は「シーソーと消えない歌」、しょうご君のベースが上手くなってますね。
しの:結果的にリベンジ戦みたいになってるからね、あの3曲。
しょ:そうですね(笑)。
ノリ:当時うちのドラムテックだった三原重夫さんが『良いベーシストだね』って。スターリンの三原重夫さんってい
う、チャットモンチーとかアジカンとかのドラムテックやってる人で。ずっとうちらに付いてくれてて。
しの:初心者のしょうごのベースを『凄く良いベーシストだ』って言ってくれて。俺らびっくりしてさ。しょうごは、こ
のアルバムで楽器弾くことに少し自信になったんじゃないかな。
しょ:そうですね。ずっと劣等感というか、周りに比べてやっぱり経験値も無い状態で。始まった時からずっとダメだっ
たから。それがこの時、三原さんに言ってもらって、自信になりました。
しの:初めて褒めてくれた人じゃない?
しょ:うん(笑)。本当、一所懸命やる事しかしてなかったんですけど、尊敬するような人が良いって言ってくれて、凄
い嬉しかったです。
しの:この時って一番キツかったけど、自分達は一番成長出来た時期だったと思うよ。
ノリ:演奏は格段に良くなったよね。
しの:っていうか、ちゃんと演奏しようって初めて思った(笑)。
ガス:そうだ(笑)。
しの:「俺たちは音楽やってるんだ」っていうのを結構思わされた時期というか。(ちゃんと)やんないのは、凄くカッ
コ悪い事なんだと思ったし。
ガス:そうだ、このアルバムとこの次のアルバムまで、チューニングがレギュラーチューニングだよね。
しの:事務所(BAJ)の社長の大森さんの案で。声がハイトーンのが抜けるじゃん? って。俺も一回やってみようかなっ
て。この時期は、本当に一回メジャーを知る時期。メジャーデビューっていうけど、逆に学ぼうとした時期ってい
うか、入学した感じだったよ。
【Que後藤による脚注】
〇脚注1
ファイナル:ライブのツアーのファイナルの事。
〇脚注2
キーが高い:調や音階、声域の事。個人差は勿論の事、男性と女性で違ったりします。西野カナの「会いたくて 会い
たくて」を原曲のキーで歌える男性はあまり居ない程、「キーが高く」て震えます。
〇脚注3
ゾンビ:生物学的に死んでいると判断されても尚動き続け、時に人を襲ったりする。頭が弱点。
〇脚注4
ドラムテック:ドラムのチューニングをする人の事。楽器の中でもドラムのチューニングやメンテナンスは難しいとさ
れており、技術は勿論の事幅広い知識と経験を必要とする。
〇脚注5
三原重夫:スターリンや、ルースターズといった日本音楽史に置いて外せないバンドのドラマーであり、重鎮。
〇脚注6
スターリン:Voに遠藤ミチロウといった、日本を代表するパンク・ロックバンド。とてつもなくカッコいい。
〇脚注7
チャットモンチー:2人組ガールズロックバンド。可愛くてカッコいい。
〇脚注8
アジカン:ASIAN KUNG-FU GENERATIONの愛称で親しまれる4人組ロックバンド。痺れる程カッコいい。
〇脚注9
BAJ:創業以来25年、“音楽をつむいで夢を届けつづける” 音楽プロデュース会社。